事前通知後の修正申告は何年分すべきか?
※2019年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
税務調査を受ける前までに絶対にやっておくべきことは、
調査対象年分の申告内容を事前確認のうえ、
誤りがあった場合は事前に修正申告をすることですが、
これもかなり浸透してきたかと思います。
「調査前に修正申告を出す意味」
http://kachiel.jp/blog/%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E5%89%8D%E3%81%AB%E4%BF%AE%E6%AD%A3%E7%94%B3%E5%91%8A%E3%82%92%E5%87%BA%E3%81%99%E6%84%8F%E5%91%B3/
ここで判断に悩むのが、誤りがあった場合に
「では、何年分の修正申告を事前に提出すべきか?」
ということです。
まず、下記の前提条件とします。
○事前通知は3年(3期)分
○事前に見直したところ明らかな誤りがあった
○その誤り箇所は過去からずっと続いている
この場合において、3年分の修正申告を提出する
リスクは、調査において5年分遡られることです。
Aの誤りを是正した修正申告を3年分調査前に提出
⇒
調査においてBという別の誤りが発覚した
⇒
Bは4~5年前も誤っている
⇒
調査で4~5年前に遡られる(調査期間の延伸)
⇒
結局、Aの4~5年前も否認対象になる
「調査対象期間が3年から5年に延びる要件」
http://kachiel.jp/blog/%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E5%AF%BE%E8%B1%A1%E6%9C%9F%E9%96%93%E3%81%8C%EF%BC%93%E5%B9%B4%E3%81%8B%E3%82%89%EF%BC%95%E5%B9%B4%E3%81%AB%E5%BB%B6%E3%81%B3%E3%82%8B%E8%A6%81%E4%BB%B6/
事前に何年分の修正申告を提出するかは、
大きく2つの判断要素があると考えてください。
(1)是正箇所以外の連年誤りがあるかどうか
上記のように、Aの誤りを是正さえすれば、
他に連年の誤りがないであろう「自信がある」
のであれば、3年分の修正申告でいいでしょう。
一方で、他にも誤りなどが容易に想定できる
(自信がない)場合は、5年分の修正申告を
提出しておいたほうが無難とも考えられます。
また上記Bなど他に誤りがあったとしても、
調査期間が4~5年前に延伸されるとは
断言できません。結果として、
3年分で終わる可能性もあるでしょう。
(2)加算税の率・額
事前に修正申告する目的は、無用な
加算税を課されないためで、特に
重加算税の場合は大きな問題となります。
一方で、平成29年1月1日以後に法定申告期限が
到来する調査対象年分については、事前の
修正申告に対して5%の加算税、それ以前分は
加算税が課されないことに区分する必要があります。
例えば3月決算法人で3期分は「平成31年3月期」
「平成30年3月期」「平成29年3月期」となり、
事前の修正申告をしても5%の加算税が
課されますが、調査対象が5期分と考えると、
「平成28年3月期」「平成27年3月期」は
加算税が課されない期間になり、
加算税の差額は5%と10%と相違します。
この差を大きいと考えるのか小さいと考えるのかは
顧問先や税理士によって相違するとは思いますので、
そこは考え方・意向によって修正申告を
提出する年分が相違するものと考えます。
ただし、誤り箇所が重加算税の対象となると
危惧される場合は、35%の差分になりますし、
重加算税を課されるリスクは高いですから、
保守的に5年分の修正申告をしておくべきでしょう。
事前の修正申告提出については、対象年分で
判断が迷うところではありますが、上記を
基準として顧問先と相談し判断すべきです。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。