事業承継税制(特例版)の適用期限から読み取れること
※2023年3月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のテーマは
「事業承継税制(特例版)の適用期限
から読み取れること」です。
令和4年度税制改正により
特例承継計画の提出期限は1年間
延長され、令和6年3月31日となりました。
ちょうど1年後に特例承継計画の
提出期限を迎えますので、3月決算対応が
終わる6月から各税理士事務所も
本格的に動き始める必要が生じます。
しかしながら・・・
令和4年度税制改正大綱(P6)では
「・・・、令和9年12月末までの適用期限
については今後とも延長を行わない。
事業承継を検討している中小企業経営者
の方々には、適用期限が到来することを
見据え、早期に事業承継に取り組むことを
強く期待する。」
と記載されているとおり、事業承継税制
(特例版)の適用期限は延長されない方向で
あることが明言されている。
https://storage.jimin.jp/pdf/news/policy/202382_1.pdf
これを踏まえて、我々税理士はクライアント
へどう説明し行動を促せばいいのでしょうか。
事業承継税制(特例版)では、
適用期限である令和9年12月31日までに
「贈与」または「相続等」の
アクションが求められています。
つまり・・・
令和9年12月31日までに特例の対象となる
自社株を特例後継者に「贈与」するか
当日までに、先代経営者に相続が発生し
相続又は遺贈により対象となる自社株を
特例後継者に「相続等」する必要があります。
相続が発生するかは、誰もコントロール
できるものではないため、運任せという
側面が否めません。
これに対して、贈与するか否かは
贈与者と受贈者双方の意思合致で進めるため
生前にコントロールすることは可能です。
そのため、基本的には適用期限である
令和9年12月31日までに「贈与」するか
否かを決定することになります。
しかしながら、ここで問題が生じます。
事業承継税制を用いて贈与する場合、
要件として、贈与時までに先代経営者は
「経営者であったこと」が求められます。
また、特例後継者の要件として、贈与時
まで「経営者であること」が求められます。
つまり・・・
贈与時までに「代表取締役の交代」が
必要となります。
現役経営者が適用期限までに運よく
代表取締役を交代するタイミングに該当
すればよいですが、まだまだ代表取締役を
退任できない経営上の問題がある場合には
事業承継税制の適用は断念せざるを得ない
ことになります。
そのため、税理士側が提案する場合
令和9年12月31日までに
「代表取締役を退任できるか否か」を
まず確かめる必要があります。
もし不可能であれば、事業承継税制を
断念し、納税資金確保に努める必要が
あります。
ただし、現役経営者が適用期限までに
突然相続が発生する可能性はゼロでは
ないため、リスクヘッジとして
特例承継計画の提出はしておくべきと
考えます。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
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