令和5年度税制改正大綱(相続時精算課税制度の追加検証)
※2022年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のテーマは
「令和5年度税制改正大綱
(相続時精算課税制度の追加検証)」です。
前回は相続時精算課税制度の検証を行いましたが
1点、お伝え漏れの懸念点がございます。
—
相続時精算課税適用者が特定贈与者から
贈与により取得した一定の土地又は建物が
当該贈与の日から当該特定贈与者の死亡に
係る相続税の申告書の提出期限までの間に
災害によって一定の被害を受けた場合には、
当該相続税の課税価格への加算等の基礎
となる当該土地又は建物の価額は、当該
贈与の時における価額から当該価額のうち
当該災害によって被害を受けた部分に相当
する額を控除した残額とする。
—
従来の相続時精算課税制度を選択し
贈与した「土地」「建物」に災害滅失等
した場合であっても、贈与時の評価額で
相続時に精算されることになってしまいます。
大綱で謳っている
「相続時精算課税制度の使い勝手向上」
を考えると、災害滅失等したにもかかわらず
相続時に精算されるのでは、贈与を躊躇
してしまうことになります。
そこで、相続時精算課税制度の使い勝手向上
に資するために、相続時精算課税制度を用いて
贈与した「土地」「建物」に災害によって
一定の被害を受けた場合には、災害によって
被害を受けた部分に相当する部分を精算される
金額から控除できる制度を導入することになります。
これにより、安心して相続時精算課税制度を
用いることになり、制度利用が促進されます。
ここで、私見ではございますが、懸念点を
お伝えいたします。
■懸念点1(「土地」「建物」の適用範囲)
具体的にどのような災害を受けた「土地」「建物」
を当該制度の適用対象とするのか、大綱の文言
だけでは全く見えてきません。
「建物」であれば、風水害や台風などによる
物理的な被害が想定されますが、
「土地」の場合には、滅失ということは想定
しにくいため、原発事故や
洪水被害で復旧にメドがつかず
利用価値が著しく低下した場合などの
想定が考えられます。
しかしながら、現段階では想定にしか
すぎないため、法律や施行令・通達などが
出揃うまで待つのみとなります。
■懸念点2(被害の証明方法)
従来と同様、り災証明書の発行などが
考えられますが、こちらも今後明らかに
なるのを待つほかありません。
■懸念点3(適用対象となる資産は限定か)
大綱では、「土地」「建物」のみの記載であり
あくまで限定列挙のように感じます。
しかしながら、会社が保有する
「土地」「建物」が被害を受ける場合には
一切救済されないのか?
こちらは疑問が残ることになります。
会社が保有する「土地」「建物」が
被害を受ける場合には自社株評価も低下します。
自社株を相続時精算課税制度を用いて
贈与した場合も同様に救済すべきでは
ないかとも思います。
直接保有か間接保有という保有方法の
相違に過ぎないためです。
事業承継という側面に大きく影響を与える
懸念になりますので、法律等により明らかに
なるのを待ちましょう。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
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