仮装隠ぺいで青色取消しになるのか?
※2019年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
引続き「青色取消し」に関して解説していきましょう。
税務調査において調査官から「青色を取消しますよ」
と指摘されても、「脅し」であることがほとんどで、
適正に反論することはわりと容易です。
さて、法人税法第127条・所得税法第150条には
青色取消しの要件(の1つ)として、
「帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は
仮装して記載し又は記録し、その他その記載又は
記録をした事項の全体についてその真実性を
疑うに足りる相当の理由があること」
と規定されており、税務調査では調査官が
これを根拠に青色取消しと主張することが多いです。
この法律規定をきちんと読んでいただきたいのですが、
帳簿に誤って記載したとか、仮装隠ぺいだから
青色取消しになるという規定ではありません。
あくまでも、【仮装隠ぺいした帳簿記録をして、
帳簿全体が信用できない】状況にある場合に
青色取消しとなり得ると規定されているのです。
そもそもこの法律規定に抵触するケースの方は
圧倒的に少ないはずです。
さらに、この法律を詳細に規定しているのが、
下記の事務運営指針となります。
「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/000703-3/01.htm
「個人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/shotoku/shinkoku/000703-3/01.htm
これを確認すると「仮装隠ぺいした帳簿記録をして
帳簿全体が信用できない」状況であったとしても、
絶対に青色取消しになるかというとそうではない
ということが規定されています。
いわゆる、青色取消しの定量的要件です。
「無申告のために所得金額の決定をした場合又は
所得金額の更正をした場合において、その事業年度の当該決定
又は更正後の所得金額(以下「更正所得金額」という。)のうち
隠ぺい又は仮装の事実に基づく所得金額(以下「不正所得金額」
という。)が、当該更正所得金額の50%に相当する金額を超えるとき
(当該不正所得金額が500万円に満たないときを除く。)。」
わかりにくいので、金額で例示しておきましょう。
(1)当初申告所得:1000万円
(2)更正後の申告所得:3000万円
(増差所得:(2)-(1)=2000万円)
(3)隠ぺいまたは仮装した所得:1000万円
(3)(不正所得金額)が500万円以上でなければ
その時点で青色申告が取り消されることはありません。
この上記のケースでは、(3)は500万円以上ですが、
(2):3000万円×50%>(3):1000万円
ですから、青色申告は取り消されないのです。
つまり整理すると、青色申告取消の定量的要件は、
A:(2)×50%<(3)
B:(3)≧500万円
の「両方」を満たす場合となります。
なお、この判定は「年」「事業年度」ごとに行うもので、
調査対象期間の累計金額ではありません。
こう考えると、たとえ仮装隠ぺい行為を
行っていたとしても、青色取消しに該当するケースは
かなり悪質な場合を除いてほぼ無いはずです。
青色取消しを調査官に指摘された場合、
規定を知らないことから適正に反論できない方が
多いのですが、法律のみならず事務運営指針を
確認すれば根拠をもって反論できますので、
ぜひこれを機に確認しておいてください。
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