修繕費か?資本的支出か?この分岐点となる考え方(その2)
※2017年4月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「修繕費か?資本的支出か?この分岐点となる考え方(その2)」
ですが、平成14年8月21日の裁決を取り上げます。
まず、法基通7−8−1(資本的支出の例示)の一部を抜粋します。
法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち
当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると
認められる部分に対応する金額が資本的支出となるのであるから、
例えば次に掲げるような金額は、原則として資本的支出に該当する。
(1)建物の避難階段の取付等物理的に付加した部分に係る費用の額
以下、略。
本通達において「物理的に付加した部分に係る費用の額」が
資本的支出の「例示」として挙げられています。
しかし、これがあることも原因なのでしょうが、
何らかの「物理的付加」を伴う修繕の場合、
「イコール資本的支出」との指摘を受けることも少なくありません。
しかし、本通達で示している内容はあくまでも「資本的支出の例示」であり、
だから、「例えば」、「ような」、「原則として」という表現が
使われているのです。
では、本裁決の具体的内容にいきましょう。
問題になったのは、プロパンガスの漏えい対策工事です。
以下、国税不服審判所の判断です。
〇本件漏えい対策工事について、請求人の提出資料、原処分関係資料
及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
・請求人は、高圧ガス製造施設等変更申請書に、プロパン陸上出荷ポンプ
(■■)内部にて発生・滞留するプロパンのガス分に起因するメカニカル
シールのドライ運転を防止するため、内部に滞留するガス分の常時排出を
目的とし、ガス抜きラインを現行の内部循環方式から外部循環方式に
変更する旨を記載して、平成10年12月18日付で■■■知事に対し
申請を行ったところ、■■■知事は、当該申請を平成10年12月24日に
許可した。
・なお、請求人は、プロパン陸上出荷ポンプの■■及び■■についても、
同様に、平成11年1月26日付で■■■知事に対し高圧ガス製造施設等
変更申請を行い、同年2月2日に許可を得ている。
・請求人は、プロパンローリ出荷ポンプ(上記Aのプロパン陸上出荷ポンプと
同一のもの。以下同じ。)3台について、操業開始1年後の平成7年ころより
ガス漏れが発生したため、その原因調査と対策についてメーカーである
株式会社■■■■と協議していた。
・株式会社■■■■は、請求人との協議に基づき、平成8年から
平成9年にかけてメカニカルシールの材質及び若干の構造変更並びに
メカニカルシールの圧力バランス値の変更等の対策を行ったが、
ガス漏れは改善されなかった。
・請求人は、本件漏えい対策工事において、従前の回転型のメカニカル
シールではガスの漏えいを防止することができなかったので、新たに
静止型のメカニカルシールを採用し、ガス抜き配管を新たに設置して
フラッシング液を吸入配管の高い位置に戻したところ、ガス漏れが
改善された。
・なお、回転型のメカニカルシールも静止型のメカニカルシールも
その材質は同じであり、出荷ポンプそのものの構造を変えるものではない。
〇本件プロパンローリ出荷ポンプは、操業を開始し1年を経過するころから、
ガス漏れが発生し、過去2回にわたり、ガス漏れ防止工事を実施したが
改善されなかったため、メーカーと協議の上、ガス漏れを防止し、
液化したプロパンガスを安全に出荷するために、本件漏えい対策工事を
実施したものと認められる。
・確かに、原処分庁が主張するように、本件漏えい対策工事は、
調達事前合議伺書に「改造」という語句が記載され、
また、ガス抜き配管を新設している。
・しかしながら、本件漏えい対策工事は、過去2回の修繕工事でも
改善されなかったために行われたガス漏れ防止工事であり、
本件漏えい対策工事において、原処分庁が主張するように物理的に
付加した部分があるとしても、当該物理的な付加は、当該資産の価値を
高め耐久性を増すためというより、液化したプロパンガスを安全に
出荷するために行った補修であり、出荷ポンプとしての本来の機能を
回復するためのものであるから、本件漏えい対策工事費は修繕費に該当し、
請求人の経理処理は相当である。
ここまでです。
このように「物理的付加がある=資本的支出」との指摘を受けることは
あるのですが、それは間違いです。
物理的付加があったとしても修繕費かもしれないのです。
しかし、本裁決でも国税が「ガス抜き配管を新たに設置しており、
このことは、通達の例示の1つと同様に物理的に付加した部分があること等
から、本件漏えい対策工事は、当該固定資産の価値を高めるとともに、
その耐久性を増すことになると認められ、資本的支出に該当することは
明らかである。」と主張していることからも分かる通り、物理的付加が
あると、資本的支出と主張してくる可能性があるのです。
また、本裁決にもある通り、「改造」などの文言が注文書などに
記載されていると、税務調査で指摘を受ける可能性があります。
ある国税OB税理士が書いた本にも「税務調査官はそういう表現を
探している」という旨の記述もあります。
ただし、改造等があり、物理的付加があったとしても
それだけでは判断ができず、「修繕内容の事実認定次第」
ということになりますので、ご注意頂ければと思います。
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