個人事業主の資格取得費用における必要経費の範囲
※2019年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
前回・前々回と、使用者が資格取得費用を負担した
場合の経済的利益について解説してきましたが、
今回は個人事業主において必要経費になるかが論点です。
これは資格取得費用のみならずですが、法人と
個人(事業主)で相違するのは、所得税法において
必要経費・家事関連費・家事費の規定があり、
必要経費の範囲が狭い傾向があることです。
下記においていくつかの裁決事例を取り上げますが、
資格取得費用が必要経費なる範囲は意外に狭いです。
まず、該当する法令解釈通達を確認しましょう。
所得税基本通達37-24
(技能の習得又は研修等のために支出した費用)
業務を営む者又はその使用人(業務を営む者の親族で
その業務に従事しているものを含む。)が
当該業務の遂行に直接必要な技能又は知識の習得
又は研修等を受けるために要する費用の額は、
当該習得又は研修等のために通常必要とされる
ものに限り、必要経費に算入する。
ここにもある通り、【業務の遂行に直接必要な】
資格取得費用だけが必要経費となります。
開業弁護士が「大学院修士課程及び博士課程の
入学料及び授業料」を必要経費として争った
公開裁決事例が下記です。
「修士及び博士課程の授業料等並びに米国の大学
への寄付金は弁護士業に係る事業所得の必要経費
とすることはできないとした事例」
http://www.kfs.go.jp/service/JP/66/10/index.html
ここでは「修士及び博士課程の専攻は、請求人の営む
弁護士業と関連性を有していることは認められる
ものの、むしろ請求人の自己研鑽のため進学したもの
と認めるのが相当で」「業務遂行上直接かつ
通常必要なものとは認められず、事業所得を
生ずべき業務について生じた費用ではない」
と判断されています。
同じような事例として、歯医者が歯科医師同士の
研修費、もしくは英会話学校を受講した授業料は
必要経費として認められなかった裁決があります。
「請求人が支出した諸会費等が家事関連費に
該当するとしても、業務の遂行上直接必要な部分を
明らかにすることができないから、必要経費の
額に算入することはできないとした事例」
http://www.kfs.go.jp/service/JP/61/12/index.html
どちらの事例も論点は同じで、
○業務関連性自体は認められている
○事業遂行上必要ではない
=その研修費等がなくても事業はできる
○事業遂行上直接必要な部分について客観的に
明らかにならない・なっていない
という判断内容です。
個人的には、業務に関連している自己研鑽費用は
趣味でない以上、必要経費になると考えますが、
実際の税務実務・判断ではかなり相違しています。
いわば、その資格取得費用・研修費が
業務上絶対に必要である理由、もしくは
売上に結び付いている根拠が必要なのです。
法人においては経費かつ給与課税不要となる
支出も、個人事業主の場合はその範囲は
狭くなりますので税務判断は難しくなります。
ぜひ注意してください。
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