兼業している者に対する青色専従者給与は否認対象
※2020年1月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
前回から引続き、青色専従者給与の注意点について
解説しますが、今回は青色専従者が
「他に職業を有する」場合の判定について考えます。
青色専従者に該当するかどうかは所得税法施行令165条で
「専ら~事業に従事するかどうかの判定は、~専ら
従事する期間がその年を通じて6月をこえるかどうか」
とされており、また同法2項二号においては、
他に職業を有する者であっても、
「その職業に従事する時間が短い者その他当該事業に
専ら従事することが妨げられないと認められる者」
については許容されていることになります。
では、その兼業状況がどの程度であれば
専従者として許容されるのか・否認されるのかは
非常に難しい論点でもあります。
この点は、会計検査院の報告でも指摘されており、
問題点が挙げられています。
「所得税の青色申告において青色事業専従者給与を
必要経費に算入する制度の運用を適切に行うよう
改善させたもの」
http://report.jbaudit.go.jp/org/h12/2000-h12-0130-0.htm
上記レポートの中でも問題点として、
下記のような事例が具体的に指摘されています。
・青色専従者の年齢(子供が働ける年齢ではない)
・専従者の妻が個人事業主で事業収入が多額
・青色専従者が法人の取締役等に就任している
過去争われた裁判の中でも、個人開業税理士の妻が
青色専従者になりながらも、会計法人等の
役員にもなっていた事例があります。
平成28年9月30日東京地裁判決では、
青色専従者には該当しないと判断されており、
平成29年4月13日東京高裁において棄却され、
納税者敗訴となっています。
もちろんこれも、実態での判定・判断であり、
〇青色専従者としての業務量・業務時間
〇役員報酬の額との比較
などが要素として挙げられますが、
「事業専従期間があった期間が6か月を超えない」
として「他に職業を有する者」と判断される
ケースが多いはずです。
青色専従者が兼業状態にある場合、
そもそも青色専従者に該当するのかどうかの
判定は難しい要素が多いものの、
「1年を通して半分以上の時間を
青色専従者としての業務に費やしている」
ことが明確に主張できない場合は、
青色専従者が否認されることになります。
税理士・会計事務所としては、青色専従者給与を
支払っていればそのまま必要経費に
計上することが多いとは思いますが、
青色専従者が他に職業・収入があるかどうかの
確認も同時にしておかないと怖いでしょう。
確定申告時には要注意の論点です。
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