分掌変更でチェックされる重要なポイント
※2017年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「分掌変更でチェックされる重要なポイント」ですが、
平成24年12月18日の裁決を取り上げます(残波事件)。
残波事件は過大役員退職給与について争われた事例ですが、
審査請求の段階では「分掌変更が認められないので、役員賞与」と
判断された事例です。
こう事実認定された根拠は様々あるのですが、
その中の1つに金融機関との対応があります。
残波事件において、請求人の平成19年2月期、平成20年2月期、
平成21年2月期、平成22年2月期は金融機関等からの借入れは
無い状態でした。
しかし、その翌期において、3億円の借入れを行なう際、
銀行員との面談に分掌変更後の取締役会長が同席しているのです。
裁決文の認定事実の中に下記とあります。
請求人の本件各事業年度末※の貸借対照表において金融機関等からの
借入金はなかったが、請求人が■■■■■■■■■から3億円の借入れを
行う際には、平成22年6月の同行の行員との面接に本件役員も参加した。
その他の事実認定もあり、「分掌変更の事実が認められない」と
なった訳ですが、私が先日に分掌変更につき、ご相談を受けた事例も
やはり金融機関のことが問題になっていました。
懇親会での立ち話レベルのご相談ではあったのですが、
金融機関に対する反面調査が行われ、銀行員の申述の内容から
分掌変更が問題視されている事例でした。
金融機関に対する反面調査が行われれば、銀行内部の面談時の資料なども
全て日の目を見てしまう可能性もあるため、ここは要注意の項目です。
ちなみに、国税内部の質疑応答事例で下記のものがあります。
(ここから)
法事例2015 みなし役員規定における「経営に従事している」とは
〔問〕みなし役員の規定に「法人の経営に従事しているもの」とあるが、
この「経営に従事している」とはどういったことを意味するのか。
〔答〕法人税法第2条第十五号(役員の意義)及び法人税法施行令第7条で
「役員の範囲」が規定されており、「……法人の経営に従事しているもの」
とある。
この「経営に従事している」ことの意義については、税法上特に法令等の
定めはなく、執行上の判断基準は示されていないが、法人の役員の職務
として一般に考えられる業務に従事していることをいう。
すなわち、法人の取締役(理事)の職務は、株式会社の場合であれば
取締役会に出席して決議に参加し、会社の業務執行の意思決定を行うこと
であり、このような職務を「経営に従事する職務」という。
つまり、法人の経営方針(職制、販売、仕入、製造計画、人事政策、
予算決算の作成方針、金融機関の選択、融資等の重要な資金計画、
設備計画、など)の立案・決定等に参画する職務であり、
その結果に対して責任を有することである。
なお、会社法では次のような重要な業務執行の決定を取締役会の
決議事項と規定している。
第362条第4項(取締役会の権限等) 取締役会は、次に掲げる事項
その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
一 重要な財産の処分及び譲受け
二 多額の借財
三 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
四 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
五 第676条(募集社債に関する事項の決定)第一号に掲げる事項
その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で
める事項
六 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための
体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして
法務省令で定める体制の整備
七 第426条(取締役等による免除に関する定款の定め)第1項の規定に
よる定款の定めに基づく第423条(役員等の株式会社に対する損害賠償
責任)第1項の責任の免除
※ 「みなし役員」「経営に従事」に関する参照判例・裁決例
S40−04−12山口地裁 税資Z041−1382
S46−07−17裁決 事例集J03−3−04
S53−07−17裁決 事例集J16−3−03
H18−11−28非公開裁決 コード番号F0−2−277
(ここまで)
この事例においても、会社法を取り上げ、「多額の借財」を挙げており、
このことからも分掌変更後は金融機関との対応はするべきではありません。
もちろん、分掌変更が成立しているか否かは最終的には事実認定の問題です。
しかし、金融機関の対応は反面調査をすれば、簡単に明確になることなので、
ここを甘くみないように、顧問先の社長にアドバイスすることが重要なのです。
「俺と会ったことを書くなよ。言うなよ。」は
当然、銀行員には通らない理屈ですから・・・。
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