創業者社長の役員退職給与の税務上の限度額(その1)
※2017年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「創業者社長の役員退職給与の税務上の限度額(その1)」
ですが、いくつかの事例を取り上げます。
3回シリーズで書いていますが、
これは私が日本全国でセミナーをした内容の「一部」です。
まず、税法上、役員退職給与はどのように定められているかを
見ていきましょう。
○法人税法(34(2))
不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、
〜損金の額に算入しない。
○法人税法施行令(70(1)二)
・その役員のその内国法人の業務に従事した期間
・その退職の事情
・その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が
類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況等に照らし、〜
この考え方を受けて、功績倍率法で計算することが
一般的になっているのです。
この功績倍率法ですが、実際には払い出す際はその会社の
役員退職慰労金規定に記載されている倍率を使用しますが、
その是非が裁判等で問われた場合は下記のいずれかで判断されます。
○同業事業規模類似法人の平均功績倍率
○同業事業規模類似法人の最高功績倍率
場合によっては、功績倍率による計算ではなく、
「1年当たり平均額法」で判断されることもあります。
では、どのような場合に、どの計算方法が採用されるのでしょうか?
なお、現在とは条文番号が違う部分はご考慮ください。
○平均功績倍率(東京高裁、平成25年7月18日)
最終月額報酬、勤続年数及び平均功績倍率を用いて役員退職給与の
適正額を算定する平均功績倍率法は、その同業類似法人の抽出が
合理的に行われる限り、法36条及び施行令72条の趣旨に
最も合致する合理的な方法であって〜
○最高功績倍率(上記と同判決)
同業類似法人の抽出基準が必ずしも十分ではない場合、
あるいは、その抽出件数が僅少であり、かつ、当該法人と
最高功績倍率を示す同業類似法人とが極めて類似していると
認められる場合など、平均功績倍率法によるのが不相当である
特段の事情がある場合に限って最高功績倍率法を適用すべきところ〜
○1年当たり平均額法(平成18年3月22日裁決)
類似法人における退職役員の退職給与の額をその勤続年数で
除して得た金額(1年当たりの退職給与の額)の平均額に、
当該役員の勤続年数を乗じて算出する方法である。
1年当たり平均額法は、平均功績倍率法を補完する方法として、
同役員の最終報酬月額が在職期間中の功績を反映しておらず、
不相当に低額であると認められる場合に用いられる。
結果として、最終報酬月額が適正である場合、
いずれか(平均、最高)の功績倍率で判断されるのが、
役員退職給与なのです。
来週以降の「その2、その3」では、これを踏まえて書いていきますので、
この考え方を覚えておいて頂ければと思います。
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