印紙税の事前通知がない=貼付漏れ1.1倍の論理を理解する
※2023年3月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
税務調査において契約書や領収書など原資資料を
確認された場合、印紙の貼付漏れ、もしくは
印紙額の相違を指摘されることがあります。
印紙税の貼付漏れの場合、印紙税の3倍(2倍の過怠金)を
支払わなければならないことはよく知られているところです。
一方で、一般的な税務調査において印紙の貼付漏れを
調査官から指摘された場合であっても、3倍の納付にはならず
1.1倍(10%の過怠金)で済むことになるわけですが、
これにはきちんとした理由・論理が存在します。
まず、印紙税の単独調査でない限り、事前通知において
印紙税を含めることはありません。国税において実務上、
印紙税はいわゆる「同時調査」を前提にしているからです。
昨年出された、最新の国税の内規においても、
調査手続きとしてこの旨が規定されています。
「税務調査手続等に関するFAQ(職員用)【共通】」
(令和4年6月 国税庁課税総括課)
問1-24 所得税や法人税の調査の際には、
印紙税についても事前通知を行うのか。
(答)
印紙税については、運用上、同時処理を行うことを前提としていますが、
同時処理とは、調査の過程で、印紙の貼付漏れ等を把握した場合に、
その事実を指摘した上で、納税義務者が自主的な見直しをして
不納付の申出を行うものであり、当初から印紙税の調査を行うことと
しているものではないため、原則として、法令上の事前通知を
行う必要はありません。なお、印紙税単独調査を同時に行う場合は、
原則として、法令上の事前通知を行う必要があります。
つまり、全体的な整理・理解としてはこのようになります。
印紙税に関する事前通知がない
⇒
法人税や所得税調査の中で印紙の貼付漏れあり
⇒
3倍の過怠税の決定があるべきことを予知してされたものでない
(納税者の自主的な見直し)
⇒
納税者自身が「印紙税不納付事実申出書」を
提出し、貼付漏れ1.1倍分の納付を行う
以上のことから、税務調査において印紙の貼付漏れが
発覚したとしても、調査官に対しては
「不納付の申出書を提出して処理・対応しておきます」
と自ら切り出せばいい、ということです。
もし、調査官から「3倍の納付決定」を持ち出されれば、
事前通知に印紙税が含まれてなかったこと、併せて
上記の国税内規を持ち出して反論してください。
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