反面調査の対応次第で実地調査に移行するのか?
※2022年4月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
多くの税理士・会計事務所が経験している論点として、
「反面調査の対応が悪い場合、実地調査に
切り替えられるのでは?」という懸念があるはずです。
例えば、反面調査において、
・詳細は不明
・調べてもわからない
などと回答せざるを得ないような場合です。
つまり、反面調査において「相手方との取引を
調べてもわからないような杜撰な管理の会社は
税務調査すべき」と税務署が考えるのでは?
という懸念です。
まず、私の経験論からすると、
反面調査で明確な回答ができない等を
きっかけとして実地調査に移行された事案を
「原則として」見たことがありません。
例外として、反面調査から実地調査への移行が
考えられるケースは下記のような事案でしょう。
●反面調査によって課税見込が明確になった
●反面先が同族など関係会社(同時調査への移行)
しかし、前者のような場合であったとしても、
実地調査に移行するわけでもなく、反面調査内で
非違が明らかになった項目についてのみ修正申告を
勧奨されて終わりになることがほとんどのはずです。
※反面調査での修正申告に対して加算税が
課されるかどうかは下記の記事を参照してください
極端なケースで考えると、不特定多数の顧客に対する
商売(典型例は飲食店)に対して反面調査をすると、
調査官は正確な回答が得られるとは期待していません。
発行した領収書の控えまでは特定できたとしても、
「何人で来たのか?」「誰と来たのか?」
など回答できる飲食店はほぼ無いはずです。
このように、反面調査から実地調査への移行確率が
かなり低い理由は2つ考えられます。
1つ目は、調査官は着手している調査事案を
結了させることが何より優先するのであって、
反面先への波及まで考える意義が薄いこと。
そしてもう1つは、反面先(のほとんど)が
その調査官の管轄外ということです。
反面先が管轄外の税務署の場合、たとえ調査官が
「あそこに反面調査を実施したが、杜撰なので
増差が見込めますよ」と伝えたとしても
(おそらく伝えないのは1つ目の理由ですが)、
反面先の管轄税務署が実地調査を実施する
とは限りませんし、具体的な資料せんでも
ない限り、おそらく動かないでしょう
(明確な非違項目があれば修正申告を勧奨する
のは上記の通りなので資料せんも無いはずです)。
また、管轄税務署が同じであったとしても、
高い確率で調査部門は違うでしょうから、
ほぼ同じような状況になるはずです。
このように、反面調査においてただ「不明です」
「わかりません」などと回答しただけで、
反面先が実地調査される確率は極端に低いはずです。
この点を憂慮している税理士・会計事務所は
多いのですが、実態は上記のとおりですから、
調べてもわからないような場合は、そのまま
税務署に回答することで全く問題ありません。
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