取引先(法人)の破産はいつ貸倒損失が計上されるのか?
※2022年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先週水曜の本メルマガから引続き、
取引先の「破産」にかかる貸倒損失を取り上げますが、
今回はその【計上時期】について解説します。
前回取り上げた税務調査の実例においても調査官が
否認根拠として挙げたのが下記の公開裁決事例です。
非常に重要ですので、引用が長くなりますが、
その判断内容を精査したいと思います。
「請求人が有する売掛債権は、その債権が消滅した
事業年度の貸倒損失となるとした事例」
(平成20年6月26日裁決)
「法人の破産手続においては、配当されなかった部分の
破産債権を法的に消滅させる免責手続はなく、裁判所が
破産法人の財産がないことを公証の上、出すところの
廃止決定又は終結決定があり、当該法人の登記が
閉鎖されることとされており、この決定がなされた時点で
当該破産法人は消滅することからすると、この時点において、
当然、破産法人に分配可能な財産はないのであり、
当該決定等により法人が破産法人に対して有する金銭債権も
その全額が滅失したとするのが相当であると解され、
この時点が破産債権者にとって貸倒れの時点と考えられる。」
「法人の破産手続においては、自然人の破産手続とは異なり、
配当されなかった部分の破産債権を法的に消滅させる
免責手続はないが、裁判所が破産法人の財産がないことを
公証の上、出すところの廃止決定又は終結決定がなされた
時点で当該破産法人は消滅することとなり、当該破産法人が
消滅することにより、法人が破産法人に対して有する
金銭債権も滅失することとなる。したがって、
F社の破産手続終結の決定がされた時点において
貸倒損失が発生したとするのが相当である。」
つまり、ここでの結論は、
法人の破産手続終結決定(または廃止決定)
=法人格が消滅する(外形的には閉鎖登記)
=法人の金銭債権・債務も付随的に消滅する
という論理から、取引先の破産にともなう貸倒損失は
【破産手続終結決定(または廃止決定)の日】
(の属する事業年度)に計上されることになります。
なお、上記のように破産によって債務者(法人)が
消滅することで債務も消滅するという考え方は
最高裁平成15年3月14日などでも採用されている
一般的な考え方になります。
また、取引先の破産を後になって知った場合ですが、
(5年以内であれば)更正の請求が可能です。
上記の公開裁決事例でも、こう判断されています。
「法人が所有する金銭債権が貸倒れとなったか否かは、
第一次的には、その金銭債権全体が滅失したか否か
によって判定され、その債権が滅失している場合には、
法人がこれを貸倒れとして損金経理しているか否か
にかかわらず、税務上はその債権が滅失した
時点において損金の額に算入することとなる。」
細かい論点について下記の記事(過去メルマガ)を
参照してください。
さて、上記の公開裁決事例では、国税は
破産=通達9-6-2の適用だと主張しましたが、
不服審判所はその論拠を採用していません
(課税判断は国税の主張が通っていますが、
その考え方のプロセスは相違しています)。
来週水曜の本メルマガでは、この論点について
掘り下げて解説しましょう。
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