取引相場のない株式評価に関する検討(3) ~純資産株価~
※2024年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のテーマは、
「取引相場のない株式評価に関する検討(3) ~純資産株価~」です。
前回は、被相続人の死亡時に評価会社が
生命保険金を取得する場合における
純資産株価の考え方を通じて、
直前期末方式を一部修正する考え方を検証しました。
評価明細書通達では、
評価対象となる財産内容や財産数量は
「直前期末」の資産及び負債を対象として
評価時点は「課税時期」とすることを
定めているに過ぎません。
これに対して、
前回メルマガの最後に下記私見を述べました。
―――
原則は仮決算方式であることを鑑みた場合、
直前期末方式であっても
重要な事象については、可能な限り、
直前期末の内容に反映させるべきではないかと
考えています(私見)。
―――
今回は、直前期末方式の採用時、直前期末を越えてから
資産(有価証券や土地など)を売却し、その後、
課税時期を迎えた場合の検証をします。
上記の評価明細書通達のとおり捉えれば
本来は一部修正する必要はないと考えられますが
仮決算方式を原則とする趣旨を鑑みた場合、
仮決算を行った場合であれば、反映された形を
純資産株価に反映させるべきと考えます。
例:土地の売却
評価基準日:R6.7.10(贈与)
直前決算日:R6.3.31
手付受領日:R6.4.15
残金決済日:R6.6.30
帳簿価額:1,000万円
売却価額:2億円
直前期末方式を採用する場合、本来であれば、
上記取引を修正する必要はありませんが、
金額的な重要性も大きいと考えらえるため
純資産株価に反映させるべきと考えます。
期中の経理処理としては
(借方) 現預金 2億円
(貸方) 土地 1,000万円
土地売却益 1.9億円
となりますが、
これを純資産株価に反映させるために
(資産側) 現預金 2億円
(負債側) 未払法人税等 7,030万円(※)
(※)1.9億円×37%
を帳簿価額・相続税評価額に追加で計上します。
もちろん、当該土地は評価基準日に当該土地は
存在していませんので、土地から除外する必要があります。
つまり、土地に計上されているのは、
課税時期(評価基準日)に存在する
土地の帳簿価額・相続税評価額
ということになります。
また、有価証券の売却があった場合も同様に考えます。
次に、生命保険契約に関する権利評価を検討します。
■生命保険契約(長期平準定期保険)の内容
契約者:評価会社(=保険料負担者)
被保険者:代表取締役
保険金受取人:評価会社
年払保険料:500万円(毎年5月末支払)
帳簿価額:5,000万円(半損※)(19回分)
※ バレンタインショック前の契約
解約返戻金:7,000万円(評価基準日)(20回分)
評価基準日:R6.7.10(贈与)
直前決算日:R6.3.31
上記の生命保険契約につき、
5表にはどのように記載すべきでしょうか。
金額的な重要性が高いと判断した場合、
直前期末方式を一部修正する必要があります。
(資産側)
保険積立金(帳簿価額)5,000万円
保険積立金(相続税評価額)7,000万円
直前期末方式を採用した場合でも、
相続税評価額は課税時期(評価基準日)を基準とします。
そのため、直前決算日から課税時期(評価基準日)において
年払保険料の支払いが1回分ズレることになります。
この1回分のズレをどう考えるかにつき、
明文規定はありませんが、
これも仮決算方式を採用した場合との
整合性を考えれば、方向性は定まります。
方法としては、以下が簡便ではないかと考えます。
現預金が年払保険料分だけ少なくなっているため、
年払保険料分につき、
「現預金」から控除(帳簿価額・相続税評価額)する
「保険積立金」から控除(帳簿価額・相続税評価額)する
「未払金」として計上(帳簿価額・相続税評価額)する
次回も引き続き、純資産株価を検証します。
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