同族役員のみの法人で福利厚生費は認められるか?
※2019年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
同族だけが役員にいて、従業員がいない法人において、
どこまでの福利厚生費等が認められ、
経済的利益がないものと見做されるのでしょうか。
今回のメルマガは、この「グレー」な
難問を取り上げたいと思います。
原則的な考え方ですが、同族役員のみであっても、
(第三者の)従業員などがいる一般的な法人と
同じ取り扱いである、ということです。
なぜなら、「同族・親族の役員のみである法人では
福利厚生費は経済的利益になる」という規定が
ないからです。税務調査において調査官も、
指摘はすれど否認根拠は明示できないゾーンです。
一方で、この例外として、(養老)保険の
経済的利益を規定した通達では下記があります。
所得税基本通達36-31(注)2(2)
役員又は使用人の全部又は大部分が同族関係者である
法人については、たとえその役員又は使用人の全部を
対象として保険に加入する場合であっても、
その同族関係者である役員又は使用人については、
ただし書を適用する。
ここにある「ただし書を適用する」とは、
「養老保険の保険料を経済的利益として
給与課税する」ということです。
この規定も裏を返すと、他の経済的利益については
同様の規定がないわけなので、原則として
同族役員のみの法人だからという理由で
否認する根拠はないことがわかります。
例えばすでに取り上げましたが、個人事業主が
法人成りをして出張日当を支給すれば
節税になります。これは社長の1人法人であっても
日当を支給することができるからです。
しかし・・・です。では、何でも認められるか
というとそうではないのが難しいところです。
例えば夫と妻の2人役員のみ(従業員なし)法人で、
社内旅行に行ったとします。
これは、全員参加の社内旅行であり、
高額でない限り否認される根拠はないはずです。
ただ、国税庁ホームページにも記載があるとおり、
「実質的に私的旅行と認められる旅行」として
「給与、交際費などとして適切に処理する
必要があります」とされています。
「No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2603.htm
これは飲食でも同じことが言えるでしょう。
「従業員全員参加の社内懇親会」と主張しても、
その実態は家族での飲食には違いありません。
ある一時期だけ従業員がいなかった、
というような特殊事情があるならまだしも、
常に同族だけの法人において、一般法人と
まったく同様に福利厚生費が給与課税に
ならないというわけではないのです。
同じような論点は「人間ドックの費用」
「スポーツジムの会費」などもあります。
ここは「グレー」な論点ではあるのですが、
「実質的に私的と認められる福利厚生費」は
経済的利益アリ・給与課税と指摘されるリスクは
常に勘案しておくべきでしょう。