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2023.12.08

国外転出時課税における住民税の取扱い

※2022年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

税理士法人レディングの木下でございます。

今回のテーマは
「国外転出時課税における住民税の取扱い」です。

国外転出時課税制度は、
平成27年度税制改正において創設されました。

適用される場面としては、以下3パターンがあります。

(1)対象者が国外転出をする時
(2)対象者が国外に居住する親族等(非居住者)へ
対象資産の一部又は全部を贈与する時
(3)対象者が亡くなり、相続又は遺贈により
国外に居住する相続人又は受遺者が対象資産の
一部又は全部を取得する時

一般的に、
(1)国外転出時課税(所法60の2)
(2)国外転出(贈与)時課税(所法60の3)
(3)国外転出(相続)時課税(所法60の3)
と呼ばれています。

(1)の概要は以下のとおりです。
国外転出時課税の対象となるのは
以下2つの要件に該当する個人で、
所得税法上の「居住者」を対象としています。

1.有価証券等一定の金融資産の時価が1億円以上
2.国外転出日前10年以内に国内に住所または
居所を有していた期間の合計が5年超

この制度は・・・
所得税法上の「居住者」に対して適用され
「非居住者」とされる個人へ適用はありません。

(2)(3)の概要は以下のとおりです。
居住者本人が国外へ転出をしていなくても、
贈与・相続により国外転出時課税の対象となる
資産が非居住者に移転した場合にも適用されます。

適用の要件は国外転出所得税と
ほぼ同様に以下のとおりです。

1.贈与・相続時における有価証券等
一定の金融資産の時価が1億円以上
2.贈与・相続時前10年以内に国内に
住所または居所を有していた期間の合計が5年超

この場合、国内にいる贈与者・被相続人に対しては
国外転出時課税による所得税課税が行われる一方で、
通常は非居住者である受贈者・相続人に対しては
贈与税・相続税課税が行われることとなります。

■住民税の取扱い
(1)国外転出時課税
非居住者に対して住民税の課税はありません。
なぜならば、賦課期日である1月1日現在には
日本に居住していないことになるためです。

+α 地方税法第32条第2項ただし書 の存在
   所得税法第60条の2 不適用

(2)国外転出(贈与)時課税
贈与者に住民税の課税はありません。

本来であれば・・・
贈与者本人は賦課期日である1月1日現在
日本居住者であるため、住民税が課税されるはずです。

しかしながら・・・
地方税法第32条第2項ただし書
において、所得税法60の3を不適用としています。
以下、条文をご参照ください。

(所得割の課税標準)
第三十二条 所得割の課税標準は、前年の所得について
算定した総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額とする。
2 前項の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額は、
この法律又はこれに基づく政令で特別の定めをする場合を除くほか、
それぞれ所得税法その他の所得税に関する法令の規定による
所得税法第二十二条第二項又は第三項の総所得金額、
退職所得金額又は山林所得金額の計算の例によつて算定するものとする。
ただし、同法第六十条の二から第六十条の四までの規定の例によらないものとする。
(以下省略)

(3)国外転出(相続)時課税
被相続人に住民税の課税はありません。
なぜならば、賦課期日である1月1日現在には
亡くなっているためです。

+α 地方税法第32条第2項ただし書 の存在
   所得税法第60条の3 不適用

実務上、ご留意ください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

木下勇人

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