国外転出時課税の盲点
※2022年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のテーマは
「国外転出時課税の盲点」です。
国外提出時課税制度は、
平成27年度税制改正において創設されました。
適用される場面としては、以下3パターンがあります。
(1)対象者が国外転出をする時
(2)対象者が国外に居住する親族等(非居住者)へ
対象資産の一部又は全部を贈与する時
(3)対象者が亡くなり、相続又は遺贈により
国外に居住する相続人又は受遺者が対象資産の
一部又は全部を取得する時
一般的に、
(1)国外転出時課税(所法60の2)
(2)国外転出(贈与)時課税(所法60の3)
(3)国外転出(相続)時課税(所法60の3)
と呼ばれています。
今回は(3)国外転出(相続)時課税に
関する盲点を取り上げます。
■事例
1.被相続人は勇退退職後(無職)に相続発生
2.被相続人は自社株100%保有
相続税評価額8,000万円(大会社)
3.相続人は長男(後継者)、長女(非居住者)
4.被相続人の財産は自社株と預金4,000万円
5.遺言なし
6.遺産分割協議は8か月目で決定
(自社株100%は長男、預金全額を長女)
相続税申告については、
申告期限内での申告納付は完了した。
しかしながら、
準確定申告は必要ではなかったのか?
本件では、遺言が存在しないため、
準確定申告期限である
「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」
には遺産分割協議は完了していません。
つまり、4か月段階では未分割の状態であったため
その段階では、法定相続分で相続したものとして
扱うことになります。
国外転出(相続)時課税は、
相続開始の時点で1億円以上の有価証券等
を所有している被相続人(居住者)に
適用されるものになります。
本件では、自社株100%は8,000万円であるため、
本制度の該当はないように考えられます。
しかしながら、「1億円」という判定は
財産評価基本通達に基づく相続税評価額で
行うものではなく、
いわゆる小会社方式(所基通59-6)で
判定するものと定められています
(所基通60の3-5、所基通60の2-7)。
そのため、相続税評価額8,000万円であっても
大会社であるため、類似株価100%となっているため
小会社方式で評価した場合には1億円を超えることは
十分に考えられます。
そのため、小会社方式で1億円を超えた場合には
4か月以内に遺産分割協議が終了していない以上、
自社株50%につき長女が相続したものとなるため、
準確定申告が必要となります。
なお、その後の遺産分割確定により、
非居住者である相続人の有価証券等の取得額が
法定相続分でない場合には、
税額が増額すれば修正申告、
税額が減少すれば更正の請求
を行うこととなります。
本件では、
自社株100%を居住者である長男が
相続することになりますので
更正の請求をすることになります。
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