国税が税務代理権限証書に過敏になる理由
※2019年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
今まで、税務代理権限証書の
法的解釈・意味について何度か解説したことが
ありますが、国税としては税務調査の立会いに
関しては税務代理権限証書の提出がない限り、
代理行為を認めないのが当たり前の原則です。
先日、ある税理士が経験した調査が下記です。
・関与していない個人事業主の調査立会い
・この個人事業主の調査はすでに始まっていた
(当初は税理士がおらずに途中から立会い)
・途中からの関与となるため、税務代理権限証書
を電子にて提出後、すぐに調査官に電話で連絡
・調査官は「現時点で税務代理権限証書の
提出が認識できないので日程調整もできない」
として税理士からの連絡に対応しなかった
(その後、日程調整だけはした)
このように、調査官としては税務代理権限証書
の提出が認められない限り、対応しない
(法的に対応できない)としています。
税理士側としては「融通が利かない」と思う
のでしょうが、国税としては「ニセ税理士」問題
のみならず、下記のようなトラブルがあり得ます。
東京高裁平成30年9月26日判決
(TAINSコード:Z888-2237)
税務代理権限証書なき税理士への文書送付は違法か
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亡夫の相続税の申告を依頼していた税理士を解任。
税務署は後任の税理士と書類等のやり取りを
していたが、後任の税理士は相続税に関する
税務代理権限証書を提出していなかったことが
判明した。納税者は税務代理権限なき者に文書を
送付したことは違法として国家賠償請求訴訟を
提起したが、一審・東京地裁は納税者が
後任税理士に税務代理権限を与えていたと
推認できるとして棄却。二審の東京高裁も、
納税者の主張を斥けた。
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この判決は最近公開されて話題になったので、
ご存知の方も多いはずです。
実は、この「後任の税理士」も私が知る人で、
依頼者と大変なトラブルになったとのことです。
この判決内容についてはTAINSなどで
詳細を見ていただくとして・・・
少なくとも東京国税局は、管内に
「判決速報」として周知しています。
(TAINS:判決速報1477)
顧問先であって、申告書とともに
税務代理権限証書を提出している場合は
問題ないのですが、関与が変わってすぐ、
もしくはスポットの税務調査対応などでは、
対国税としてはもちろん、依頼者との関係でも
すぐに税務代理権限証書を提出すべきなのです。
手続きを怠ると大きなトラブルになる
ケースもありますから、ぜひ注意してください。
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