売上計上漏れ=重加算税という間違った論理
※2021年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
前回から引続き、調査官が重加算税と
指摘しがちな【誤った論理】に関して解説します。
今回のメルマガでは、法人調査において調査官が
よく言う「売上計上漏れ=重加算税」の論点です。
驚くことに、売上の計上を漏れた事実をもって
重加算税だと指摘する調査官が多くいます。
売上の計上「漏れ」としている以上
(除外・脱ろうではないので)、この時点で
重加算税になるわけがないのですが・・・
調査官が売上計上漏れでも重加算税と指摘する
(間違った)論理はこのようなものでしょう。
「複式簿記で会計処理をしているのだから、
売上の計上が漏れたとしても、現金なり売掛金などの
反対科目で過不足が発生し、結果として
計上漏れしていることが(決算時には)わかるはずだ」
まさしく当初申告を作ったことがない調査官ならでは
の主張なのですが、調査官の中でもむしろ
当たり前の主張内容・論拠となっています。
先日、質問があった実例は下記です。
・調査官が売上計上漏れ=重加算税と主張
・根拠として昭和62年5月8日最高裁判決を明示
・この判決では「仮装隠蔽行為を原因として過少申告の
結果が発生しているものであれば足り、それ以上に
申告に際し、過少申告を行うことの認識を有している
ことまでを必要とするものではない」とされている
・このことから調査官は「売上の計上が漏れていた場合に、
納税者としてこの売上を計上しなかった場合、税金が
少なくなるという認識を有している・いないは関係ない
ので、売上が漏れた場合は重加算税になる」と主張
このように、具体的な判決まで持ち出されて調査官に
「売上計上漏れ=重加算税」と言われると、
そのまま納得してしまいそうですが・・・
もちろん調査官の論理が間違っています。
この判決内容を読むまでもなく調査官が間違っているのは、
「仮装隠蔽行為を原因として~」とありますので、
【重加算税の要件=仮装隠ぺい(故意性)】
という理解から何も変わりません。
つまり、「売上計上漏れ=ミスして漏れた」
なのであれば、仮装・隠ぺい行為がないわけですから、
重加算税ではない、という当たり前の結論です。
ちなみに、上記の最高裁判決が意味しているのは、
「過少申告を目的としていなかった仮装隠ぺい行為にも
重加算税が課される」
ということであって、
「過少申告を目的としていなかった売上計上漏れ(ミス)
でも重加算税が課される」
ではありません。調査官の認識・読み方が
明らかに間違っています。
特に法人調査においては、調査官は
「売上の計上は漏れるはずがない」
「計上漏れがあったとしたらそれは意図的な行為」
と捉えるケースがありますから、重加算税に対しては
ぜひ適正に反論をしてください。
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