建物、建物附属設備の按分方法
※2016年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「建物、建物附属設備の按分方法」ですが、
平成13年2月19日の裁決をご紹介します。
※下記文中の表はずれて見えることがございます。
表のみをPDFにまとめましたので、ずれる方はこちらも併せてご参照ください。
http://kachiel.jp/sharefile/inspire/160205mailmaga_vol492_itiran109600.pdf
1/22のメルマガで「建物、建物附属設備の按分」に関する裁決を
取り上げましたが、今回はその具体的計算方法の例です。
1/22に取り上げた裁決ではRCのマンション(本事例では別棟の3室)を
購入した場合、土地、建物、建物附属設備に区分計算する「必要がある」
というのが、審判所の考え方でした。
では、具体的に、どのような計算方法が想定されるのでしょうか?
合理的な按分計算であればいいというのが審判所が示した考え方ですが、
以下の裁決が平成13年2月19日のものです。
〇事案の概要
・本件は、会社役員である審査請求人(以下「請求人」という。)が不動産貸付の業務の用に
供したマンションの減価償却費の計算に関して、土地及び建物(建物本体及び建物附属設備を
合わせたものをいう。以下同じ。)の取得価額並びに建物本体及び建物附属設備の取得価額の
区分を争点とする事案である。
・本件物件の所在地、新築年月日、取得年月日及び取得価額は、下記の通りである。
新築年月日、取得年月日、取得価額の順番です。
平成2年11月26日、平成7年10月31日、10,000,000円
平成3年4月26日、平成7年10月31日、10,000,000円
平成2年2月28日、平成7年10月26日、10,000,000円
平成7年6月14日、平成7年10月31日、14,000,000円
平成7年6月14日、平成7年10月31日、14,200,000円
・本件物件の売買契約書には、土地及び建物並びに建物本体及び建物附属設備
のそれぞれの価額は記載されておらず、消費税相当額の記載もない。
〇判断
イ 認定事実
原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
(イ)■■■は、■■■■■■■■■の取得価額又は販売価額を土地及び
建物に区分経理していない。
(ロ)■■■■■■■■及び■■■■■■■■の分譲会社である■■■■■
■■■(以下「■■■■」という。)は、同物件の販売価額を土地及び建物
並びに建物本体及び建物附属設備に区分経理している。
■■■■■■■■及び■■■■■■■■の建物本体及び建物附属設備の割合を
■■■■が保存する工事請負契約書等から算出すると次表のとおりであり、
■■■が発行した「土地建物のあん分について」に記載されている「建物
附属設備のあん分比率」と同率である。
(表1)
┌──────┬──────┬──────┬───────┐
|物件名\区分| 建物本体 |建物附属設備| 合 計 |
├──────┼──────┼──────┼───────┤
|■■■■■■|84.22%|15.78%|100.00%|
|■■■■■■|77.10 |22.90 |100.00 |
└──────┴──────┴──────┴───────┘
(ハ)■■■■■■■■■の分譲会社である■■■■■■■(以下「■■■」
という。)は、同物件の販売価額を土地及び建物に区分経理しているが、
建物本体及び建物附属設備の区分は不明である。
(ニ)請求人が■■■■■■■■■を取得した日の前後の期間に、当該物件の
所在するマンションにおいて、当該物件と規格及び階層等が類似する他の
物件が売買された参考実例はない。
(ホ)■■■■■■■■■の平成6年度及び平成9年度における固定資産税
評価額は、次表のとおりである(略)。
(ヘ) ■■■■■■■は、■■■■から■■■■■■■■■■■を取得し、
同時期にこれを請求人に販売しているが、同物件の取得価額又は販売価額を
土地及び建物に区分経理していたか否か不明である。
しかしながら、■■■■では、■■■■■■■■■■■の販売価額を区分経理
しており、その割合は土地が30%、建物が70%である。
また、■■■■■■■■■■■に係る建物本体及び建物附属設備の工事費の
割合を■■■■が保存する工事請負契約書等から算出すると、次表のとおり
であり、■■■■の譲渡原価証明に記載されている建物附属設備割合と
同率である。
(表2)
┌──────┬──────┬──────┬───────┐
|物件名\区分| 建物本体 |建物附属設備| 合 計 |
├──────┼──────┼──────┼───────┤
|■■■■■■|70.72%|29.28%|100.00%|
|■■■■■■|70.72 |29.28 |100.00 |
└──────┴──────┴──────┴───────┘
(ト)■■■■■■■■■の再建築費評点数算出表を基に建物本体及び建物
附属設備の再建築費評点数の割合を算出すると、次表のとおりとなる。
(表3)
┌──────┬──────┬──────┬───────┐
|物件名\区分| 建物本体 |建物附属設備| 合 計 |
├──────┼──────┼──────┼───────┤
|■■■■■■|85.65%|14.35%|100.00%|
└──────┴──────┴──────┴───────┘
ロ 土地及び建物の取得価額の区分(略)
ハ 建物本体及び建物附属設備の取得価額の区分
(イ)所得税法施行規則第32条《種類等を同じくする減価償却資産の償却
費》において、減価償却資産で減価償却資産の耐用年数等に関する省令
(以下「耐用年数省令」という。)に規定する耐用年数を適用するもの
についての所得金額の計算上必要経費に算入される償却費の額は、当該
耐用年数に応じ、耐用年数省令に規定する減価償却資産の種類等の区分
ごとに、かつ、当該耐用年数及び償却の方法の異なるごとに、当該償却の
方法により計算した金額とする旨規定されている。
また、耐用年数省令別表第一《機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用
年数表》の減価償却資産の種類は、建物及び建物附属設備を区分して掲げて
いる。
なお、耐用年数通達2−2−1の定めにより、木造等の建物の附属設備に
ついては、建物本体と一括して耐用年数を適用することができることとして
取り扱われているが、この取扱いは、木造等の建物にあっては、建物本体
及び建物附属設備の耐用年数の差がそれほど著しくなく、その建物附属設備
の金額も少額な場合が多いことなどから、経理の簡素化等のため認められた
取扱いであると解される。
したがって、鉄筋鉄骨コンクリート造等のマンションの場合には、建物本体
及び建物附属設備を区分して、それぞれの耐用年数により減価償却費の計算を
する必要がある。
(ロ)購入した建物本体及び建物附属設備の取得価額については、上記ロの
(イ)と同様、それぞれの購入代価等が売買契約書等で区分して明らかに
されている場合は、その区分されているところの購入代価等によることと
なるが、その購入代価等が区分して明らかにされていない場合には、当該
建物の取得価額を合理的な方法により建物本体及び建物附属設備に区分する
必要がある。
このことから、請求人から提示された売買契約書等では建物本体及び建物
附属設備の取得価額の区分が明確にできないため、やむを得ず、建物附属
設備の取得価額を建物本体の取得価額に含めたところで減価償却費を計算
したとする原処分庁の主張は採用できない。
(ハ)本件物件については、上記1の(3)のニのとおり、売買契約書に
建物本体及び建物附属設備それぞれの購入代価等が明らかにされていない。
そこで、合理的な方法で建物の取得価額を建物本体及び建物附属設備に
区分計算する必要があるが、請求人が主張する販売会社又は建築会社が
作成した譲渡原価証明等に基づいた建物本体及び建物附属設備の価額の
割合による方法、あるいは、請求人提出の再建築費評点数算出表における
建物本体及び建物附属設備の構造別の再建築費評点数の割合による方法も
合理的と認められることから検討したところ、次のとおりである。
A ■■■■■■■■、■■■■■■■■及び■■■■■■■■■■■に
ついては、上記イの(ロ)及び(ヘ)の譲渡原価証明等に記載された建物
本体及び建物附属設備の割合を不相当とする理由は認められないことから、
この割合により区分計算する方法が合理的と認められる。
B ■■■■■■■■■については、上記イの(ハ)のとおり、■■■が
建物本体及び建物附属設備の区分をしていたか否か不明であり、建物本体
及び建物附属設備それぞれの工事費等の割合の算出が困難であることから、
請求人の主張するとおり、公的機関が物件ごとに算出した再建築費評点数
算出表における構造別の再建築費評点数の割合により区分する方法が
合理的と認められる。
C なお、上記A及びBの割合は、新築時におけるものであるから、
中古資産である■■■■■■■■■については、新築時から請求人の取得時
までの損耗等を見込んでその割合を補正する必要がある。
B 建物本体及び建物附属設備の取得価額
(A) ■■■■■■■■
■■■■■■■■に係る上記イの(ロ)の建物本体及び建物附属設備の割合
を中古資産を取得した時における建物本体及び建物附属設備の未償却残高の
割合(以下「未償却残高割合」という。)により補正した上、■■■■■■
■■の建物の取得価額5,815,000円をあん分すると、建物本体及び
建物附属設備の取得価額は、次表のとおりとなる。
なお、未償却残高割合は、次の算式で計算した。
未償却残高割合=1−1×0.9×償却率(定額法)×経過月数/12
上記算式中の「経過月数」は新築時から取得時までの経過月数をいう。
また、償却率は、建物本体は耐用年数60年の0.017、建物附属設備は
耐用年数18年の0.055によった。建物附属設備の耐用年数を18年
としたのは、請求人が当該設備をその構造又は用途ごとに区分せず一括で
償却しており、また当該設備は主として金属製のものと認められることから、
耐用年数省令別表第一の「建物附属設備」の「前掲のもの以外のもの及び
前掲の区分によらないもの」の「主として金属製のもの」の耐用年数を適用
したものである。
(表4)
┌──────────────┬───────┬───────┬───────┐
| 区 分 | 建物本体 |建物附属設備 | 合 計 |
├──────────────┼───────┼───────┼───────┤
|建物本体及び建物附属設備の | | | |
|割合 ㈰| 84.22%| 15.78%|100.00%|
├──────────────┼───────┼───────┼───────┤
|未償却残高割合 ㈪| | | |
|(1−1×0.9×㈫×㈬/ | 92.35 | 75.25 | /|
| 12) | | | / |
|┌─────────────┼───────┼───────┤ / |
||償却率 ㈫| 0.017| 0.055| / |
||(耐用年数) | (60年)| (18年)| / |
|├─────────────┼───────┼───────┤ / |
||経過月数 ㈬| 60月| 60月|/ |
├┴─────────────┼───────┼───────┼───────┤
|㈰の補正(㈰×㈪) ㈭| 77.78%| 11.87%| 89.65%|
├──────────────┼───────┼───────┼───────┤
|㈭の構成比 ㈮| 86.76 | 13.24 |100.00 |
├──────────────┼───────┼───────┼───────┤
|取得価額 | 円| 円| 円|
|(5815000円×㈮) |5045094| 769906|5815000|
└──────────────┴───────┴───────┴───────┘
(B) ■■■■■■■■
■■■■■■■■に係る上記イの(ロ)の建物本体及び建物附属設備の割合を
中古資産を取得した時における建物本体及び建物附属設備の未償却残高割合
により補正した上、■■■■■■■■の建物の取得価額5,380,000円
をあん分すると、建物本体及び建物附属設備の取得価額は、次表のとおりと
なる。
(表5)
┌──────────────┬───────┬───────┬───────┐
| 区 分 | 建物本体 |建物附属設備 | 合 計 |
├──────────────┼───────┼───────┼───────┤
|建物本体及び建物附属設備の | | | |
|割合 ㈰| 77.10%| 22.90%|100.00%|
├──────────────┼───────┼───────┼───────┤
|未償却残高割合 ㈪| | | |
|(1−1×0.9×㈫×㈬/ | 92.99 | 77.31 | /|
| 12) | | | / |
|┌─────────────┼───────┼───────┤ / |
||償却率 ㈫| 0.017| 0.055| / |
||(耐用年数) | (60年)| (18年)| / |
|├─────────────┼───────┼───────┤ / |
||経過月数 ㈬| 55月| 55月|/ |
├┴─────────────┼───────┼───────┼───────┤
|㈰の補正(㈰×㈪) ㈭| 71.70%| 17.70%| 89.40%|
├──────────────┼───────┼───────┼───────┤
|㈭の構成比 ㈮| 80.20 | 19.80 |100.00 |
├──────────────┼───────┼───────┼───────┤
|取得価額 | 円| 円| 円|
|(5380000円×㈮) |4314760|1065240|5380000|
└──────────────┴───────┴───────┴───────┘
(C) ■■■■■■■■■
■■■■■■■■■に係る上記イの(ト)の再建築費評点数の割合を中古
資産を取得した時における建物本体及び建物附属設備の未償却残高割合に
より補正した上、■■■■■■■■■■の建物の取得価額6,509,000円を
あん分すると、建物本体及び建物附属設備の取得価額は、次表のとおりとなる。
(表6)
┌──────────────┬───────┬───────┬───────┐
| 区 分 | 建物本体 |建物附属設備 | 合 計 |
├──────────────┼───────┼───────┼───────┤
|再建築費評点数の割合 ㈰| 85.65%| 14.35%|100.00%|
├──────────────┼───────┼───────┼───────┤
|未償却残高割合 ㈪| | | |
|(1−1×0.9×㈫×㈬/ | 91.33 | 71.95 | /|
| 12) | | | / |
|┌─────────────┼───────┼───────┤ / |
||償却率 ㈫| 0.017| 0.055| / |
||(耐用年数) | (60年)| (18年)| / |
|├─────────────┼───────┼───────┤ / |
||経過月数 ㈬| 68月| 68月|/ |
├┴─────────────┼───────┼───────┼───────┤
|㈰の補正(㈰×㈪) ㈭| 78.22%| 10.32%| 88.54%|
├──────────────┼───────┼───────┼───────┤
|㈭の構成比 ㈮| 88.34 | 11.66 |100.00 |
├──────────────┼───────┼───────┼───────┤
|取得価額 | 円| 円| 円|
|(6509000円×㈮) |5750051| 758949|6509000|
└──────────────┴───────┴───────┴───────┘
(D) ■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■の建物の取得価額9,800,000円を上記イの
(ヘ)の工事費の割合であん分すると、建物本体及び建物附属設備の取得価額は、
次表のとおりとなる。
(表7)
┌────────────┬───────┬───────┬───────┐
| 区 分 | 建物本体 |建物附属設備 | 合 計 |
├────────────┼───────┼───────┼───────┤
|工事費の割合 ㈰| 70.72%| 29.28%|100.00%|
├────────────┼───────┼───────┼───────┤
|取得価額 | 円| 円| 円|
|(9800000円×㈰)|6930560|2869440|9800000|
└────────────┴───────┴───────┴───────┘
(E)■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■の建物の取得価額9,940,000円を上記イの
(ヘ)の工事費の割合であん分すると、建物本体及び建物附属設備の取得価額は、
次表のとおりとなる。
(表8)
┌────────────┬───────┬───────┬───────┐
| 区 分 | 建物本体 |建物附属設備 | 合 計 |
├────────────┼───────┼───────┼───────┤
|工事費の割合 ㈰| 70.72%| 29.28%|100.00%|
├────────────┼───────┼───────┼───────┤
|取得価額 | 円| 円| 円|
|(9940000円×㈰)|7029568|2910432|9940000|
└────────────┴───────┴───────┴───────┘
いかがでしょうか?
「譲渡原価証明等に基づく割合、再建築費評点数の割合による方法が
合理的であると示された事例」という意味で非常に貴重な事例です。
もちろん、これ以外の計算方法も「合理的」であれば認められる訳ですが、
何が「合理的」であるかはケースバイケースです。
具体的な計算方法が示された事例として覚えておいていただければと思います。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。