弔慰金を節税策として有効活用するための考え方
※2023年4月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先週水曜のメルマガから引続き、「(死亡退職)弔慰金」
について解説しますが、今回は弔慰金を節税策として
有効活用するための「そもそも論」を掘り下げます。
退職金と相違し、弔慰金は法人の在任・在職時に
死亡した際にしか支給できないわけですが、一方で
在任・在職時に死亡するリスクをヘッジする方法です。
死亡退職による弔慰金が節税になるのは、
・支給した弔慰金は法人の損金になる(適正額以内)
・弔慰金を受け取った遺族は相続税の課税対象外
というもので、(出張)日当と同じく、支給した方は
損金で、受け取った方は非課税という王道の節税です。
では、役員が死亡した際に支給する弔慰金が節税になる
場合について、ケース別に考えてみましょう。
●退職金を上積み支給したい場合
役員退職金の支給は「最終月額報酬×在任年数×功績倍率」
を上限とすることが一般的ですが、法人において役員の
死亡保険等に加入している場合などは、死亡退職金を
さらに「上積んで」支給したいという動機が大きくなります。
ここで退職金を上積む理由・根拠として「功労加算」を
考えがちなのですが、功労金は功績倍率に含まれる概念で、
極めて特殊な事情がある場合に限って認められる
=ほとんどのケースでは認められません。
退職金を何とか上積みしたい=法人の損金を
増やしたいと考えるのであれば、(死亡退職の場合は)
功労加算のようなリスクある方法ではなく、
弔慰金を支給することを検討すべきでしょう。
●退職金の一部を弔慰金に振り替える場合
上記は保険金など当て込む益金、もしくは法人に留保が
多額にある場合ですが、キャッシュリッチではない
法人であっても弔慰金は考慮すべき節税策になります。
死亡退職金はみなし相続財産となり、非課税限度額は
「500万円×法定相続人の数」ですから、超えた額が
相続税の課税対象額となるわけです。
例えば、最終月額報酬80万円×在任年数20年×3倍
=4,800万円が最大に支給できる退職金ではあるが、
法人の資金繰り上3,000万円しか支給できない場合、
法定相続人を2人と仮定すれば、2,000万円が
相続税の課税対象額に繰り入れられますが
(3,000万円-500万円×2人)、
同じ総支給額3,000万円であっても内訳を
・弔慰金(業務外死亡):80万円×6ヵ月=480万円
・死亡退職金:2,520万円
とすれば、相続税の課税対象額は確実に下がります。
●実質的に引退している創業者に支給する場合
創業者など、実質的に引退(分掌変更の退職金支給済み)
していても、代表権のない会長職として役員報酬を
払い続けていれば、弔慰金を支給することができます。
特に創業者の場合、同族会社株式を保有しているなど
相続税がかからないということはないでしょうから、
せめて弔慰金を支給することで節税したいところです。
死亡退職による弔慰金の支給は、退職金の上乗せと
考えられがちですが、ほとんどの法人で設定すべき
節税策と考えるべきでしょう。
また、社長などの死亡リスクヘッジ策として、
法人保険は当然ながら団信加入などが考慮されがち
ですが、弔慰金も含めて考えるべきです。
さて、ここまで3回にわたって弔慰金を解説してきましたが、
来週水曜の本メルマガでは最終回として、ここまで
取り上げなかった弔慰金の論点を解説します。
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