弔慰金:税務における原則的な考え方
※2023年3月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
経営者から「節税方法」に関する質問を受ける
税理士・会計事務所も多いと思いますが、法人における
節税方法としての「日当=非課税」については、
2月15日・22日の2回で詳細に解説しました。
もう1つ、あまり考慮されない節税方法として、
役員死亡時の「弔慰金」が挙げられるのですが、
税務上の取扱いを正確に理解されていない方が多いことから、
今回から数回に分けて弔慰金の税務を解説していきます。
特に同族会社において、弔慰金が節税になる理由は明確で、
支払う側の法人:損金(適正額以内に限る)
受取る側の遺族:相続税の課税対象にならない
参考:国税庁「No.4120 弔慰金を受け取ったときの取扱い」
とされているからです。死亡退職金は、所得税法上は
非課税所得(源泉不要)となりますが、受け取った遺族
としては「みなし相続財産」となる一方で、
弔慰金は遺族に対する補償料・手当と解されますので、
原則として(社会通念上相当と認められている範囲内で)
支出した法人側では損金となり、かつ受け取った遺族の
相続財産にはなりません。
弔慰金に関して、税務上の理解をややこしくしているのは、
相続税の通達規定(相基通3-20等)はありますが、
法人税法上の明文規定がないことから、
弔慰金を支給する法人側として「どうすれば」「いくらまで」
損金となるのかがよくわからない、という点にあります。
実務上は、相基通3-18~20の規定を
法人税側で準用し、以下の2要件を満たしている場合、
支給した弔慰金は損金になると考えられます。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/01/03.htm
●弔慰金の支給額(相基通3-20)
業務上の死亡:最終月額報酬×36ヵ月(以内)
業務外の死亡:最終月額報酬×6ヵ月(以内)
なお、この基準はあくまでも弔慰金の最大金額であって、
相基通3-19において「雇用主等が営む事業と類似する
事業における当該被相続人と同様な地位にある者が受け、
又は受けると認められる額等を勘案して判定する」
とある以上、最終月額報酬が高額であるなど、
「不相当に高額な部分の金額」を認定されると、
損金不算入額が生じるリスクはあります。
また、弔慰金とされる金額を超えた部分については
退職金として取り扱われ、相続税のみなし財産になり、
かつ法人側では退職金の過大判定に含まれます。
●弔慰金と退職金の明確な区分は必要
弔慰金とは、税務上の役員退職給与に含まれないから
弔慰金なのであって、上記のとおり相続財産に含まれない
という解釈になります。
このように書くと、非常に当たり前のように感じますが、
税務調査で弔慰金を否認(実質的に退職金に含まれる
とされる事実認定と、退職金の過大認定)されない
ためには、弔慰金と退職金を明確に区分・処理する
ことが非常に重要となります。
来週水曜の本メルマガでは、弔慰金を退職金と
認定されないための処理・対応方法を解説します。
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