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2024.03.22

弔慰金:退職金と区分するため実務上すべきこと

※2023年4月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

先週水曜のメルマガから引続き、「(死亡退職)弔慰金」
について解説します。今回は税務調査で否認されないために、
弔慰金と退職金を明確に区分する処理・対応方法です。

税務は「実態」「総合勘案」で判断することが原則ですが、
税務調査において否認されないためには(一義的には)
「形式」をいかに満たすかが重要になります。

まず、弔慰金に関する社内規程です。
税務判断をするうえで何事も同じなのですが、規程があり
その通りに支給しているかどうかが判断基準の1つです。

前回も取り上げた国税庁タックスアンサー
「No.4120 弔慰金を受け取ったときの取扱い」
において「弔慰金等が、実質上退職手当金に該当するかどうかは、
弔慰金等を退職給与規定その他これに準ずるものの
定めに基づいて受ける場合においては、その規定等により判定」
とし、社内規程に支給基準がある場合は、
退職金と区分・判定すると明記されています。

一方で、弔慰金に関する社内規程がない場合、
株主総会において決議をすべきでしょう。また、
株主総会決議をする場合、あえて退職金と弔慰金の議案を
分けて決議することで、明確な区分と判定されやすいです。

また、役員退職金を支給した場合、特別損失として
計上することが実務上多いと思いますが、弔慰金を
「福利厚生費」勘定として計上することで、
退職金と明確に区分していることを明示することができます。

さらに細かい論点ですが、退職金と弔慰金を支給する場合、
あえて分けて・別々に振込みすることで、明確な
区分をさらに明示することが可能となります。

退職金と弔慰金を混在させて会計処理等をしたケースで、
弔慰金が否認された事案として下記があります
(国税不服審判所の検索システムで出ます)。

非公開裁決事例(平成15年10月9日)
(前略)(2)本件役員退職金の会計処理は帳簿上及び
損益計算書上とも弔慰金及び慰謝料に区分して経理されておらず、
ほかに請求人の主張を確認できる証拠書類の提出もないこと
及び(3)退職役員の相続人である請求人の現代表者は
本件役員退職金を相続により取得した財産の中に含めて
相続税の申告をしていることからすると、本件役員退職金に
弔慰金及び慰謝料が含まれているとは認められず、
この点に関する請求人の主張には理由がない。

最後の論点となりますが、死亡退職金には
所得税が課税されないため「退職所得の源泉徴収票」
ではなく、「退職手当等受給者別支払調書」を
税務署に提出することになります。

一方で、弔慰金を退職金と区分して支給する場合、
この支払調書に弔慰金を含めて記載・提出しないことです。

「弔慰金名目での支給がある場合の
「退職手当金等受給者別支払調書」の提出義務」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hotei/9/05.htm

上記質疑応答事例は若干わかりにくい表現ですが、
あくまでも弔慰金が「実質上、被相続人の退職手当金等に
該当するならば「退職手当金等受給者別支払調書」を
提出する必要があります。」とされていることから、
退職金と区分して支給するのであれば、本支払調書の
提出は不要・退職金のみの記載となるということです。

来週水曜の本メルマガでは、引続き弔慰金について
解説しますが、次回は弔慰金を節税策として
有効活用するための「そもそも論」を取り上げます。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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