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2021.10.26

役員報酬の未払計上は否認されるのか?

※2020年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

今回は質問が多い「役員報酬の未払計上」について、
税務調査の観点から解説します。

なお、すでにご存知の方も多いと思いますが、
コロナ禍により役員報酬を減額したい場合に、
「業績悪化改定事由」に該当するかについては
下記の質疑応答を参照してください。

「国税における新型コロナウイルス
感染症拡大防止への対応と申告や納税などの
当面の税務上の取り扱いに関するFAQ」

5 問6~7 37~38ページ

コロナ禍により資金繰りの影響で役員報酬を
未払いにするケースが増えたと思いますが、
この未払計上は認められるのでしょうか?

役員報酬の未払計上については、税務調査で
否認指摘された事案を何度も質問・相談を
受けたことがあるのですが、定期同額などの
要件を満たしている限り、原則として
否認されるものではないでしょう。

役員報酬の未払計上について、
いくつか論点があることは理解します。

例えば、一時的な資金繰りのために
未払計上していたのであれば、資金繰りが
解消された段階で未払いの計上を解消して
いなければ認められないとする考え方。

しかし、法人税法の役員報酬の法律を
いくら読んでも、未払計上が認められない
とする要件は出てきません。

また、資金繰り悪化が未払計上の要件でも
なければ、資金繰り悪化解消時の支払
(未払解消)が要件でもないわけです。

次に、法律には出てこなくても・・・
過去の判決・裁決事例を見ると、未払計上が
認められていない事例があるとする
考え方ですが、これは少なくとも
役員報酬に定期同額の要件が導入された
平成18年度税制改正の適用以後の
判決・裁決のみを参考にする必要があります。

上記改正以前は、役員報酬を増減し、
未払計上することで法人の所得調整が
可能であったことから、未払計上が
認められないと判断されたケースがあった
こともまた事実ですが、現在は定期同額が
原則要件であることから、未払計上しても
法人の所得調整はできないことになります。

私が知る限り、法人の所得が多額になった
ことから総会議事録をバックデートし、
過去遡及して役員報酬を増額・未払計上
して否認された事案がありますが、これは
当然に法律要件を満たしていませんので、
否認されて当然といえるでしょう。

調査官によっては、役員報酬の要件を
(所得税の青色専従者給与と同じように)
「支払」が要件と勘違いしている場合も
あるようですので注意が必要です。

役員報酬における源泉所得税は、
あくまでも「支払時」に源泉・納付義務が
あるわけですが、実務上は未払計上で
あっても(源泉・納付義務がない時でも)
源泉申告・納付をするのは、過去遡及して
役員報酬を増減していないことを
証拠として残すという意味合いもあります。

このように、税務調査で役員報酬の
未払計上分を否認指摘された場合は、
調査官に対して「役員報酬の未払分が
損金にならない根拠を教えてください」
と確認・主張する必要があります。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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