従業員社宅の経済的利益と非課税規定
※2019年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
役員社宅については本メルマガですでに
体系的に解説しましたが、従業員社宅についても
誤った理解をしている方が多いようなので、
今回のメルマガで解説しましょう。
従業員社宅については、下記の国税庁サイトに
まとめられています。
「No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2597.htm
なお、上記タックスアンサーおよび通達では、
「固定資産税の課税標準額」を使った計算式で
「賃貸料相当額」を計算することになっていますが、
法人が他者から賃借している場合は、
【実務上は】その家賃を「賃貸料相当額」として、
その50%以上を従業員から徴収していれば、
経済的利益はないものとして課税は不要です。
さて、ここで誤りやすいのが、
上記タックスアンサーの最後にもある
「仕事を行う上で勤務場所を離れて住むことが
困難な使用人に対して、仕事に従事させる都合上
社宅や寮を貸与する場合には、無償で貸与しても
給与として課税されない場合」です。
これは所得税法第9条第1項第6号および
施行令第21条第4号を指していますが、
具体的には所得税基本通達9-9に例示があります。
(1)船舶乗組員に対し提供した船室
(2)常時交替制により昼夜作業を継続する事業場
において、その作業に従事するため常時早朝又は
深夜に出退勤をする使用人に対し、その作業に
従事させる必要上提供した家屋又は部屋
(3)通常の勤務時間外においても勤務を要する
ことを常例とする看護師、守衛等その職務の遂行上
勤務場所を離れて居住することが困難な使用人に対し、
その職務に従事させる必要上提供した家屋又は部屋
(4)次に掲げる家屋又は部屋
イ 早朝又は深夜に勤務することを常例とするホテル、
旅館、牛乳販売店等の住み込みの使用人に対し提供した部屋
ロ 季節的労働に従事する期間その勤務場所に
住み込む使用人に対し提供した部屋
ハ 鉱山の掘採場(これに隣接して設置されている
選鉱場、製錬場その他の附属設備を含む。)に
勤務する使用人に対し提供した家屋又は部屋
ニ 工場寄宿舎その他の寄宿舎で事業所等の構内
又はこれに隣接する場所に設置されているものの部屋
上記はあくまでも例示とはいえ、かなり
特殊な職業・職場環境でなければ
従業員社宅が非課税にならないといえます。
単に、会社の指示で「転勤になった」
「単身赴任になった」程度では、
この非課税規定の適用はなく、賃貸料相当額の
50%を徴収していない場合、給与課税
されるリスクが高いといえるでしょう。
東京高裁平成16年6月8日判決でも
下記のように判断されています。
「職務の遂行上やむを得ない必要に基づき貸与を
受ける家屋とは、例えば、住み込みの使用人に
提供した家屋又は部屋、看護婦、守衛等に
提供した家屋又は部屋等をいうものである。」
言葉としては、「仕事を行う上で勤務場所を
離れて住むことが困難な使用人に対して、
仕事に従事させる都合上社宅や寮を貸与する場合」
ですが、その範囲はかなり狭いと認識すべきです。
さて、来週金曜の本メルマガでは上記に関して、
税務調査の実例を取り上げてさらに解説します。
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