必要経費だと主張するなら納税者に立証責任!?
※2020年1月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
さて、前回までは、
所得税における必要経費における原則的な
考え方・判断基準について解説してきました。
税理士・会計事務所からすると、特に年1の
個人確定申告においては、「必要経費かどうかの
判断に迷ったらとりあえず経費算入」というもの
かと思いますが、税務調査に入られて困るのは、
必要経費であることの主張・立証です。
前回も解説しましたが、
所得税法施行令第96条(家事関連費)において、
(1)業務の遂行上必要であること
かつ
(2)必要経費と家事費との区分が
客観的に明確に区分できるもの
が必要経費の要件となっています。
これを税務調査の現場で解釈すると・・・
納税者:「業務で使うから必要経費ですよ」
⇒
調査官:「明確に区分できないとダメです」
⇒
納税者:「でも全額家事費ではないですよね?」
⇒
調査官:「客観的に明確に区分できるというなら
それを説明できる資料を出してください」
となり得るわけです。
もちろん完全に、必要経費における立証責任が
納税者側だけにあるということではありません。
これらの論点がわかりやすい裁決事例が下記です。
「請求人は、不動産所得の金額の計算上必要経費に
算入した一部の経費について、不動産賃貸業の遂行上
直接必要であった部分を明らかにしていないことから、
当該経費を必要経費に算入することはできないとした事例」
(平成23年3月25日裁決)
http://www.kfs.go.jp/service/JP/82/05/index.html
この裁決(判断)の中でも、
「必要経費についての立証責任は、原則として
原処分庁にあると解すべきである」としながらも、
「一般に必要経費は請求人にとって有利な事柄であり、
請求人の支配領域内のこととして証拠資料を
整えておくことが容易であるから、原処分庁が
具体的な証拠に基づき一定額の経費の存在を
明らかにし、これが収入との間に合理的対応関係を
有すると認められる場合は、これを超える額の
必要経費は存在しないものと事実上推定され、
請求人は、経費の具体的内容を明らかにし、
ある程度これを合理的に裏付ける程度の立証を
しなければ、上記推定を覆すことはできない」
とされています。
つまり、個人の支出は事業なのかプライベートなのか
判別しにくいため、税務署が区分することには
ムリがあって、立証責任をある程度納税者側に
転換せざるを得ないということです。
同じような判断として下記裁決事例があります。
「請求人が支出した諸会費等が家事関連費に
該当するとしても、業務の遂行上直接必要な
部分を明らかにすることができないから、
必要経費の額に算入することはできないとした事例」
(平成13年3月30日裁決)
http://www.kfs.go.jp/service/JP/61/12/index.html
現実の税務調査において、調査官がここまで
立証責任を納税者に求めてくるかはわかりませんが、
必要経費について争った裁決・判決を見ると、
【曖昧なものは必要経費にならない】と
判断されている事例があるのもまた事実です。
個人事業主の申告をする場合は、必要経費については
税理士から顧問先に対して、家事費と認定されない
ためにきちんと立証できる資料を残しておくことを
常に指導しておかなければなりません。
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