所得の帰属:従業員名義で行われた収益
※2022年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
水曜の本メルマガでは、前回から
税務調査で問題になりやすい「所得の帰属」を
取り上げていますが、今回は法人の従業員名で
行われた収益の帰属について解説します。
以前、本メルマガでも取り上げたことがある
実例ですが、廃材等が発生する法人では、
経営者が認識しながらも、従業員が廃材等を
売却しているケースが多くあります。
【税務調査の実例】
・オフィスの電気・LAN配線などを
敷設する電設工事会社
・依頼者(顧客)からは工事作業とともに
配線やケーブルなどの仕入れも併せて受注
(見積り時点で資材が余るように多めに受注)
・工事完了後に余った資材については
従業員が買取業者に持ち込み売却している
・調査官は廃材売却に関する資料せんを
保有している、もしくは一部法人で計上
している売却収入から、売却金が他にも
あることを把握できる状況
・経営者の認識は「従業員が得た売却金は
担当した従業員みんなで飲みに行った費用に
充当されているから損益はゼロ」(のはず)
この調査事案と似たような公開裁決事例が
ありますので、そちらを取り上げましょう。
「請求人が請求人の従業員に帰属するとした
販売業務の収益は、請求人に帰属するところ、
一部売上原価等は損金の額に算入されるとした事例」
(平成30年6月28日裁決)
この裁決事例では、ネットオークションを
行っている法人において、従業員の個人名で
行われた取引について、所得の帰属
(法人か従業員個人か)が争われました。
不服審判所が示した、所得の帰属における
判断基準・要素は下記の4つです。
●事業の経緯
●業務の遂行状況
●業務に係る費用の支払状況
●請求人の認識などの事実関係
この裁決事例では、
・ネットオークションには個人名義で出品
しているものの、法人の従業員名義であった
・ネットオークションに関する事務作業や
商品の発送は法人オフィスで行われていた
・法人が仕入れた商品を出品していた
・経営者は従業員が収益を得ていたという
認識があったはず(従業員はオフィス内で
目の届く範囲で行っていたことから明らか)
などの事実認定から、あくまでも
法人の所得に帰属すると判断しました。
このように、従業員が個人名義で行っていた
としても、法人の事業の一環として行い、
かつ経営者が従業員の行為を認識している、
もしくは認識できる場合、所得の帰属は
名義人である従業員ではなく、法人と
認定される可能性が高いでしょう。
今回は、法人(の代表者)が従業員の行為を
認識していたケースを取り上げましたが、
非常に難しいケースとして、従業員が内密に
収益を得ていた場合があります。
来週水曜の本メルマガでは、従業員不正
における所得の帰属について解説します。
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