所得の帰属:税務調査の実例(自販機収入)
※2022年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
水曜の本メルマガでは、税務調査で問題に
なりやすい「所得の帰属」を解説していますが、
今回は判断に迷う実例を取り上げます。
法人の税務調査において発覚しやすい論点として、
売上や雑収入の一部が代表者個人の口座に
入金されているケースがあります。
税務署側から考えると、
1 事前に代表者の個人口座を調べている
2 資料せんがある
3 あるべき売上・雑収入の計上・入金がない
4 経費に該当する売上・雑収入がない
の4パターンから把握できる論点です。
これらのうち、所得の帰属という論点で
よくあるケースとして「自販機収入」があります。
自販機は事業所・店舗に設置されながらも、
代表者個人で契約、個人口座に入金されている
ケースが多いからです。
事業所や店舗に自販機の設置があるとすると、
雑収入があるはずだという観点からすれば
上記3に該当しますし、法人の経費のうち
自販機の電気代があれば、上記4から
雑収入の漏れが把握できるというわけです。
さて、つい最近相談があった調査事案は下記です。
・代表者個人の土地の上に自販機を設置
・自販機の契約は代表者個人
・隣接する法人の土地から電気を引いており、
電気代の負担は法人となっている
(法人は建設業で土地は資材置場として利用)
・調査官は法人の雑収入計上漏れと指摘
・併せて代表者に対する役員賞与と指摘
この調査事案における前提事実として
問題になっているのは「電気代負担が法人」
であることであり、「代表者個人で雑所得
など申告がない」ことの2点でしょう。
なお後者の論点は、年調済み+雑所得が
20万円以下であれば申告不要の場合も
多いかと思います(特に自販機から得られる
所得は少額だと推察されますので)。
どちらにしても、代表者個人が契約主体で、
代表者が雑所得として申告していれば
所得の帰属に関して税務調査で争いになる
可能性は低かったものと推察はします
(その場合、法人側の電気代は否認ですが)。
上記の事案における調査官の否認根拠は
「電気代の負担を法人がしている以上は
該当する雑収入も法人」という論拠ですが、
論理としては通っておらず、経費を
負担しているのであればそのまま、該当する
収入が経費負担者になるわけではありません。
所得の帰属として反論するポイントとして、
・あくまでも契約者は代表者個人であること
・代表者個人の土地に設置されていること
・飲食店の店舗脇に設置された自販機などと
相違し法人の事業と一体ではないこと
などから、この事案における自販機収入は
代表者個人に帰属する可能性が高いでしょう。
また、自販機収入が個人に帰属する場合、
電気代の法人負担は確かに代表者に対する
経済的利益の供与に該当するのでしょうが、
経済的利益が毎月「おおむね一定」であれば、
賞与ではなく役員報酬と反論もできます。
法人の税務調査である以上、調査官は
個人の所得=個人の修正申告/期限後申告
にはしたくないという内情を抱えていますが、
(自販機のみならず)所得の帰属で
反論することが可能なケースは多いので、
ぜひ上記実例を参考にしてください。
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