持戻し免除の意思表示の推定を用いた配偶者保護
※2022年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のテーマは前回に引き続き
「持戻し免除の意思表示の推定を用いた配偶者保護」です。
―――
(特別受益者の相続分)
民法903条4項
婚姻期間が二十年以上の夫婦の
一方である被相続人が、他の一方に対し、
その居住の用に供する建物又はその敷地について
遺贈又は贈与をしたときは、
当該被相続人は、その遺贈又は贈与について
第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したもの
と推定する。
―――
条文を確認すると
「贈与税の配偶者控除(相法21の6)」
に似ていることがわかります。
両者の要件の違いを検証します。
1.婚姻期間が二十年以上の夫婦の
一方である被相続人が、他の一方に対し
→
どちらの制度も婚姻期間20年を
要件としている点は同様です。
2.その居住の用に供する建物
又はその敷地について
→
こちらも同じと言いたいところですが
贈与税の配偶者控除では、
「居住用不動産を取得するための金銭」
も可能としている点で一部異なります。
3.遺贈又は贈与をしたときは
→
贈与税の配偶者控除は「贈与」のみですが、
持戻し免除の意思表示の推定は
「遺贈又は贈与」として「遺贈」
を含んでいます。
つまり・・・
遺言を用いて居住用不動産を
相続させても適用可能という
ことになります。
4.(条文にはありませんが)金額基準なし
→
贈与税の配偶者控除は「2,000万円以内」ですが
持戻し免除の意思表示の推定は
金額基準がありません。
つまり・・・
2,000万円に限らず「いくらでも」
持戻し免除の意思表示が推定される
ことになります。
上記検討を含めて以下検証します。
推定相続人:配偶者、長男(両者は不仲)
被相続人の財産:
居住用不動産4,000万円
その他の財産6,000万円
この場合に・・・
被相続人が長男から配偶者を保護したい
と考えると以下が良案かと思います。
対策(1):
全ての財産を配偶者に相続させる
特定財産承継遺言を作成する
→
居住用不動産4,000万円は
持戻し免除の意思表示が推定され
遺留分の対象から除外されます。
配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例が
適用され納税額はゼロとなります。
配偶者居住権の設定よりも
配偶者保護の効果は高いといえます。
対策(2):
その他の財産のうち現金1,000万円を使って
下記内容の一時払い終身保険に加入する。
契約者:父(=保険料負担者)
被保険者:父
保険金受取人:母
→
死亡保険金は受取人固有の財産となるため
遺留分の対象から除外されます。
場合によっては、非課税枠を超えて
保険加入することも一考です。
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