推計課税の合理性
※2018年3月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「推計課税の合理性」ですが、
裁決(平成29年6月22日)を取り上げます。
この事例は内装工事業を営む請求人から
帳簿書類等の提示がなかったとして、
事業所得の金額が推計され、更正されたものです。
これにつき、原処分庁は
〇請求人の取引先の調査により、各年分の総収入金額を認定
〇合理的基準により選定した類似同業者の総収入金額に対する
必要経費の割合の平均値を算出
〇これを乗じて、請求人の各年分の必要経費を推計するのは合理的
と主張しました。
請求人は「請求人のように多額の経費や設備投資等の特別な支出がある者を
対象とする場合には、事業所得の金額が過大に計算されてしまう」と
主張しました。
では、国税不服審判所の判断はどうなったのでしょうか?
〇原処分庁は、~本件各年分の総収入金額に本件類似同業者の
平均必要経費率を用いて、請求人の本件各年分の事業所得の金額を
計算している。
〇一般に、業種・業態が類似する同業者にあっては、
特段の事情がない限り、経験則上、同程度の総収入金額に対し
同程度の所得が得られると考えられる。
〇このことは請求人の営む事業の場合であっても例外でなく、
かつ、請求人に特段の事情があるとは認められない。
〇同業者間に通常存する程度の営業条件の差異は、
同業者の比率から平均値を算出する過程において捨象される。
〇同業者の平均必要経費率は合理性がある。
〇原処分庁は、本件類似同業者を抽出するに当たり、
請求人の事業との類似性を判断する基準として、
(1)業種・業態の類似性、
(2)個人、法人の別、
(3)事業所の所在地の近接性、
(4)資料の正確性及び
(5)事業規模
についての類似性に係る各基準を設けて、
これら全てに該当する者を抽出している。
〇原処分庁が採用した抽出基準及び抽出方法自体には合理性がある。
〇請求人が特殊事情として主張する諸事情は、
いずれも適切な抽出基準及び抽出方法により選定された類似同業者の
平均必要経費率を採用することにより、その平均値に吸収され捨象される。
〇平均必要経費率は平成24年分が69.63%、
平成25年分が66.90%、平成26年分が69.57%となる。
なお、本事例は個人事業主が前提なので、比較はできませんが、
「一応の」参考情報をお伝えすると、TKCが公開しているデータでは
平成29年9~11月決算が前提の内装工事業の企業データは
下記となっています。
平均売上高:194,613千円
経常利益:8,167千円(4.2%)
併せて、ご確認頂ければと思います。
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