日当はいくらなら否認されないのか?
※2019年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
前々回の本メルマガ(金曜)から「日当」について
解説していますが、今回はその本丸ともいえる
「日当はいくらなら否認されないのか?」です。
前回のメルマガのおさらいになりますが、
日当の非課税要件は下記3つをすべて
満たしていることです。
(1)役員・従業員の全員が支給対象になっていること
(2)支給額が適正なバランスになっていること
(3)他社と比して高額ではないこと
(1)(2)については前回のメルマガで解説しました。
過大役員給与・退職金でも同じ論点ですが、
この(3)については非常に難しい基準になります。
その根拠・判断基準をあえて挙げるとすると、
下記がもっとも有名な調査結果でしょう。
「2017年度 国内・海外出張旅費に関する調査」
https://www.e-sanro.net/research/research_jinji/shanaiseido/shuccho/pr1710.html
ここにある日当額を見ると非常に低額なのですが、
この程度であれば税務調査で指摘されることすら
ないと言えます。
日当額がいくらなら大丈夫、というのは
言い切ることはほぼ不可能でしょう。
なぜなら、役員報酬の額とも連動するからです。
例えば、役員報酬を年額1億円とっている社長に
設定できる日当額は高いはずですし、
その逆もまた然り、という話です。
税務調査において、日当額の否認指摘を受け、
私が相談を受けた案件では下記があります。
・社長の役員報酬年額600万円
・日帰りでの営業にほぼ毎日出かけている
(1日に複数の取引先をまわる)
・日帰りの日当額は@2万円(社長)
・日当額の年額は約400万円になっている
この調査事案では、もちろん他の社員にも
日当額の設定をされているものの、実質的に外出
(日当の支給)は社長のみで、全体として考えると
1,000万円の報酬のうち600万円のみが
課税対象となっている、と捉えられました。
結局、この調査事案では上記(1)(2)の要件を
満たしていることから、最終的に否認は
されませんでしたが、日当額と役員報酬額の
バランスが悪いと指摘を受ける実例です。
一方で、日当額が高額として争った裁決・判決を
検索しても、そのような事案は見つかりません。
これはそもそも、日当額が否認されない範囲で
設定されているのか、もしくは高額でも調査で
(指摘されても)否認されないのか判然としませんが、
調査官としては(1)(2)を満たしている中で、
(3)をもって否認するのは難しいのも事実でしょう。
役員報酬額であれば、国税が保有する情報から
同業他社の平均額を算出することは容易ですが、
日当額を算出するのは難しいからです。
また、同業他社の日当額を算出できても、
過大役員給与・退職金のように判例が積みあがって
いない分野なので、国税が立証責任を果たすのは
現実的に難しいとも言えます。
一般論とはなりますが、通常の会社においては
社長の日当額は1万円ちょっとが
「安全圏の限界」かな、とは個人的に思います。
従業員の平均年収が400万円として
日当額を@2,000円としていた場合に、
社長の役員報酬が2,000万円であれば、
単純に5倍の日当設定が可能という論法でも
@1万円の日当額にしかなりません。
もちろん、従業員年収と役員報酬の乖離が
もっとあれば、論法上では日当額は多額に
設定でき得るわけですが、上記(3)を加味すると
2万円を超えると否認指摘されやすいでしょう。
来週金曜のメルマガでは、日当に関する
その他の注意点について解説します。
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