日当(非課税)の設定・改訂における税務上の注意事項
※2023年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先週水曜の本メルマガでは、法人が支給する
日当等が非課税となるための、税務上の
原則的な考え方や設計方法について解説しました。
今回のメルマガでは、顧問先に対して社内規程を
新規作成または改訂の提案をするにあたって、
税務上で気を付けるべき点を取り上げます。
日当を設定する、または増額改訂する契機は、
現実的には経営者が自身の日当額を増やしたい、
もしくは(営業職など)従業員の給与ベースは
上げづらいが、日当によって手取り額を増やし、
従業員満足度を上げたいという考えからでしょう。
●経営者自身:役員報酬を増額すると
税・社保負担が増えるだけになりやすい
(特に、すでに役員報酬が高い場合)
●従業員:一度設定した給与ベースを下げれば
不利益変更となるが、日当を下げたとしても
法律上の不利益変更とはならない
(ただし、実質的には満足度は下がる)
このことから、日当の設定については
「役職×出張先」のマトリックスによって
ある程度細かく設定した方がいいと言えます。
なぜなら、
●役職ごとに細かく設定することで
経営者の日当を正当に上げる理由づけになる
●日帰りなどでも日当を支給することによって
宿泊を伴う出張がない従業員も支給対象となる
からです。具体例を挙げておきましょう。
(例)平均給与額
一般職:400万円
管理職:600万円(一般職の1.5倍)
取締役:800万円(一般職の2倍)
代表取締役:1,200万円(一般職の3倍)
●宿泊を伴わない出張
一般職:@1,000円
管理職:@1,500円
取締役:@2,000円
代表取締役:@3,000円
●宿泊を伴う出張
一般職:@3,000円
管理職:@4,500円
取締役:@6,000円
代表取締役:@9,000円
●海外出張
一般職:@6,000円
管理職:@9,000円
取締役:@12,000円
代表取締役:@18,000円
この例では、給与の格差(倍率)どおりに
日当額を設定していますが、倍率をそのまま
当てはめる必要もありません。一方で、
代表取締役の役員報酬(だけ)が高い場合、
日当の絶対額が高額になることもあり得るので、
そのような場合は倍率以内に抑えておくという
金額勘案も必要になります。
また、管理職の区分がない、もしくは
代表取締役以外の取締役がいない場合であっても、
このように規程上は役職を細かく設定することで、
代表取締役だけ日当が高い、という印象が
かなり薄まりますので、税務調査で
指摘・論点とされる可能性は下がります。
ここまでのとおり、経営者の日当額を上げるためには
「役員報酬額を上げる=格差・倍率を大きくする」
もしくは「一般社員の日当設定額を上げる」のか
どちらかの選択になるということです。
最後になりますが、海外出張がある法人の場合、
日当とは別に「支度金」を設定しているケースも
ありますが、税務上は注意が必要です。
海外出張に伴う支度金を支給する場合、その支度金が
非課税になる根拠として「国家公務員等の旅費に
関する法律」第39条第2項があるのですが、
この規程では【1年以内の再支給はしない】
ことになっています。
つまり、1年に1回程度、海外出張にともなう
支度金を支給しても非課税といえるでしょうが、
年間何度も海外出張があり、その都度・毎回
支度金を支給すると、非課税ではなく
経済的利益と指摘される可能性が高くなります。
日当額の設定については、労務上の現実的な論点も
多いのですが、税務上はいかに
「水平的公平性と垂直的公平性」を満たし、
税務調査でその正当性を主張できるための根拠が
重要となりますので、ぜひ注意してください。
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