昔あった!?概算経費率はどれだけリスクがあるか?
※2020年4月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
税理士事務所の変更で、新規に個人の確定申告を
引き受けると、過去の申告書を確認してみて、
「これ何!?」は税理士事務所アルアルです。
いまだに話を聞いて驚くのが、業種ごとの
「概算経費率」(もしくは「概算所得率」)を
適用した申告が存在すること。
ここにいう「概算経費率」とは、医業で
措置法適用による適法な概算経費ではなく、
昔々税務署が使っていたという
「概算経費率」(表)のことを指します
(ネットで検索すれば実際のものかどうか
検証はできませんが、出てはきます)。
こういう納税者に対して、「概算経費率なんて
法律根拠はないので適用できませんよ」と
伝えると「前の先生は(領収書もない経費を)
認めてくれた」「例年より税金が高くなった」
などクレーム?になるのでタチが悪い案件です。
ちなみに私が国税に入ったのは平成13年ですが、
私も業種別の「概算経費率表」なるもの
(の実物)を見たことがありません。
この概算経費率を用いた申告ですが、
もちろん「実額課税」が原則ですから、
税務署も認めるわけがありません。
ただ現実的に考えると、小規模かつ
所得(率)は低くないことから、
税務調査に入られる確率が低く、
今まで見つかったことがないだけでしょう。
では、概算経費率を適用した申告にリスクが
ないかというとそうではなく、調査に入られれば
【7年遡及】という大きなリスクがあります。
概算経費率ではありませんが、似たような
有名な事案として「アメリカ大使館事件」
が存在します。
「給与等の収入金額をことさら過少に
申告した行為は、国税通則法第70条第5項に
規定する「偽りその他不正の行為」に該当する
とした事例」(平成13年8月24日裁決)
https://www.kfs.go.jp/service/JP/62/03/index.html
概要としては下記です。
・アメリカ大使館(源泉徴収義務なし)で
働く日本人(居住者)が、実際の給与収入の
60~70%程度で申告をしていた
・該当者は1人ではなく多数で「先輩からの
言い伝えを信じて」申告していたと答弁
(代々にわたりそのような申告をしていた)
・給与明細から給与収入の実額は知り得た
・「偽りその他不正の行為」として7年課税
その後、高裁判決(平成16年11月10日)では
下記のように判断されています。
「(年棒の6割という)本件慣行の内容自体
不明確で申告の客観的基準たり得ないのみならず、
(略)結局本件慣行が存在したこと自体極めて
疑わしいといわざるを得ない。」
この事案は上記の概算経費率なるものと
ほぼ同内容・判断に該当すると思われ、本来は
適用できないことを知りながら申告した
ということで7年遡及されるリスクがあります。
このような依頼者(納税者)には
「概算経費率の適用は7年遡及のリスクが
大きいですよ」と説明すべきでしょう。
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