更正があるべきことの予知について(その1)
※2018年4月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「更正があるべきことの予知について」です。
4/12のメルマガ(有料版)で久保氏が
調査通知後の修正申告であっても、更正があるべきことを
予知してされたものでないときは重加算税の対象にならない
という内容を解説しました。
これは国税通則法68条(重加算税)に次のとおり、
定められているからです。
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第65条第1項(過少申告加算税)の規定に該当する場合
(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査が
あつたことにより当該国税について更正があるべきことを
予知してされたものでない場合を除く。)において、
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( )書きで記載されている通り、更正があるべきことを
予知していなければ、重加算税ではない訳です。
では、この「更正があるべきことの予知」とは
どのように考えればいいのでしょうか?
また、その立証責任はどちらにあるのでしょうか?
少し長くなりますが、東京地裁判決(昭和56年7月16日)を
ご紹介します。
ちなみに、この裁判は東京高裁判決(昭和61年6月23日)に
棄却され、確定しています(納税者敗訴)。
○従つて、修正申告書の提出が「調査があつたことにより…更正が
あるべきことを予知してされたものでないとき」というのは、
税務職員がその申告に係る国税についての調査に着手して
その申告が不適正であることを発見するに足るか
あるいはその端緒となる資料を発見し、これによりその後調査が進行し
先の申告が不適正で申告漏れの存することが発覚し
更正に至るであろうということが客観的に相当程度の確実性をもって
認められる段階に達した後に、納税者がやがて更正に至るべきことを
認識したうえで修正申告を決意し修正申告書を提出したものでないこと、
言い換えれば右事実を認識する以前に自ら進んで修正申告を確定的に
決意して修正申告書を提出することを必要とし、
かつ、それをもって足りると解すべきである。
○原告は調査により申告に係る所得金額ないし税額に脱漏があることが
発見され、過少申告が把握されるに至つた後になつて更正を
予知してされた修正申告についてのみ加算税を賦課することが
許される旨主張するようであるが、そのように解すると、
税務職員の調査において前記のような資料を発見された後であっても
所得金額ないし税額の脱漏を具体的に把握される前に修正申告を決意し、
修正申告書を提出すれば加算税の賦課をのがれうる場合もあることに
なって前記法条の趣旨に反することとなる。
○修正申告書の提出が更正があるべきことを予知してされたものでない
ときに例外的に加算税を賦課しないこととした前記法条の趣旨からすれば、
右の点については、調査により更正があるべきことを予知して
修正申告がされたものでないことの主張・立証責任が原告にある
というべきである。
○これを本件についてみると被告が昭和47年4月3日の原告に対する
法人税調査において発見した資料及びその際の○○の態度等からすれば
その後調査が進行し先の申告が不適正で申告漏れの存することが発覚し
更正に至るであろうということが客観的に相当程度の確実性をもって
認めるに足りる段階に達したというべきであり、かつ、原告は、
右被告の4月3日の調査以前に確定的決意をしていなかつたのであること
前記認定のとおりであるから、本件修正申告書の提出は「調査が
あったことにより…更正があるべきことを予知してされたもの」
ということができる。
結果として、「更正があるべきことを予知していない」ということは
納税者の立証責任になるのです。
ただし、「無いこと」の立証は一般的に難しいものとなります。
たしかに、実務上は事務運営指針により、
調査通知がされた段階で提出された修正申告書は
原則として、更正があるべきことを予知してされたものに該当しない
とされています。
しかし、これが争われれば、その立証責任は納税者にあることを
併せて覚えておいてください。
当然ですが、「更正があるべきことを予知したか否か」は
調査通知後の税務調査前であっても、税務調査の途中であっても
同じ考え方になります。
来週の金曜日に、この話をもう少し掘り下げていきます。
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