更正の請求:実務上の論点(複数・まとめ)
※2022年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先週水曜の本メルマガから引続き、更正の請求
について解説しますが、今回は連載の最終回で、
ここまで取り上げてこなかった、実務上の重要な
論点をいくつかまとめて解説することにします
(特に、所得税絡みの更正の請求)。
今年年初(1月5日)の本メルマガでは、
更正の請求は国税通則法第23条の要件により
「正しい処理内容である申告から、
正しい申告への変更は更正の請求ができない」
と解説しました。
これは譲渡所得の申告において、取得費が不明
の場合において、5%の概算取得費を用いるか、
もしくは市街地価格指数を用いるかでも
実務上判断に迷う論点でもあります。
まず、取得費不明の場合に、当初申告で5%の
概算取得費を適用したうえで、後になって
取得費を市街地価格指数を用いた金額に
変更した更正の請求は認められません。
この論点も「更正の請求が認められたことがある」
と言う話を税理士・会計事務所から複数聞いた
ことがあるのですが、それはラッキーなだけです
(更正の請求の担当者が不知だった)。
一方で、当初申告で5%の概算取得費を
適用したうえで、後になって取得費の実額が
わかる資料等が出てきた場合、これは
更正の請求の要件を満たしています。
「譲渡所得取得費不明の場合で
更正の請求ができるケースできないケース」
また、当初申告要件がある規定(その多くは
措置法規定)については、当初申告で
適用しない限り、更正の請求をすることが
できないわけです。所得税の典型事例としては
「住宅ローン控除」がこれに該当します
(もちろん、年調済み・申告なしであれば
住宅ローン控除で還付申告が5年間できます)。
しかし、(法律規定とは反し)一般的な
税務署の実務対応としては、住宅ローン控除で
更正の請求をすることができます
(正確には「更正の嘆願」になります)。
住宅ローン控除に関しては、税務署も
納税者有利の取扱いをしているのが実情です。
さて最後になりますが、所得税に限らず、
実務上は更正の請求をするか、もしくは
進行年度で過年度損益修正損で計上するかが
判断に迷うケースとして最も多いと思います。
判断基準として、後発的事由・後発事象が
進行年度にあれば過年度損益修正損として
当期に計上となりますが、多くのケースでは
「過年度の誤りに今気づいた」というのが
事実なので、このような場合であれば
更正の請求が正しい税務処理になります。
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