2017.04.28

書面添付の法的理解

※2016年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。

書面添付について勘違いされていることが多いので、
前回に引続き解説していきたいと思います。

書面添付および意見聴取は、そもそも税理士法に
定められた制度ですから、納税者に対する
質問検査権の行使(税務調査)とはまったく別物であり、
税務署が書面添付をした税理士に行使するものです。

書面添付に関する税理士法の規定を整理すると、
下記になります。

申告書に書面添付(税理士法第33条の2)

⇒ (無予告調査でない限りは)意見聴取を行う
(税理士法第35条)

⇒ 意見聴取は税務代理権限証書を提出した
税理士に対して行われる(税理士法第30条)

⇒ 税務調査に移行 または 調査省略
(調査省略の場合は省略の旨の書面が発行される)

以上から理解できることは、意見聴取の結果として
誤りが発見され、結果として修正申告になっても、
そもそも納税者が受けた税務調査ではありませんから、
加算税が課されないことになります。

この点は注意が必要で、意見聴取後に
正式に調査に移行した後に提出した
修正申告には加算税が課されることになります。

区切りはあくまでも、意見聴取の段階なのか、
そのあとの税務調査(質問検査権の行使)の段階
なのか、ということになります。

また、書面添付制度で注意が必要なのは、
申告書に添付することが要件であることです。

税理士法第33条の2第1項には
「申告書を作成したときは」
「当該申告書に添付することができる。」
と規定されていることから、申告後に後付けで
書面添付をすることはできません。

税理士が書面添付をしない(という選択をする)
理由はいくつか考えられますが、

・書面添付をするのが面倒(報酬をもらえない)
・書面添付した税理士にリスクがある

の他に、「書面添付してもどうせ調査に移行される
なら意味がない」という理由があります。

昔はさておき・・・・
意見聴取が行われてから調査が省略になる割合は
年々上がっており、2014年12月の
「東京税理士界」で公表された「税務調査アンケート」
(平成26年度)の結果を見ると、法人税に対する
意見聴取に対して税務調査の省略率が

65.1%(実地調査移行率:34.9%)

となっています。

http://kachiel.jp/sharefile/120814_syomen_enquete_752376.pdf

この数字を見ると、意見聴取が行われた結果
税務署側の疑問が解消されると
調査には移行しない、というスタンスが
はっきりと表れているとみることができます。

書面添付制度については、法的にも
実務的にも理解されていないように思いますが、
上記のように整理すると理解しやすいでしょう。

 

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一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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