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2024.05.10

最新の公開裁決事例から学ぶ重加算税の賦課基準

※2023年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

コロナ禍の反動で、直近の税務調査の件数が急増、
この1~2ヵ月は税務調査の質問・相談も増えましたが、
相も変わらず「重加算税」に関する質問・相談が多いです。

さて、国税不服審判所は3ヵ月ごとに「公開裁決事例」
(裁決事例集)をサイトに公開していますが、
https://www.kfs.go.jp/service/JP/index.html
令和4年分として(本日までに)公開された13件の
裁決事例のうち、5件が重加算税で争っており、
うち全件において納税者が勝っている(=重加算税が
取消されている)という状況です。

不服申立てされ、その総数のうち何件が不服審判所で
重加算税が争われたのか、総母数がわからないので、
全体としての勝率は不明ですが・・・令和3年分に遡っても
重加算税で争った裁決事例8件のうち、これまた
全件で納税者が勝っているのは異常といえるでしょう
(税務調査における重加算税の賦課決定処分の
適正性が相当に疑われるレベル)。

上記のとおり、あくまでも公開裁決事例に着目した結果であり、
不服申立ての総件数が不明で、かつ全ての裁決事例ではない
(公開裁決事例以外である非公開裁決事例の方が多い)
わけですが、ここで公開裁決事例に着目する理由は、
公開裁決事例には【先例性】があるからです。

国税不服審判所のサイトにはこのように記載があります。
https://www.kfs.go.jp/service/index.html
「国税不服審判所では、(略)税務行政の適正な運営の
確保に資するとの観点から、先例となるような裁決については、
「裁決事例集(冊子)」を作成し公表しています。」

また、裁決事例を公開するかどうかの基準として、
事務運営指針では下記を挙げています。

「裁決結果の公表基準について(事務運営指針)」
(平成12年9月8日 国税不服審判所長)
1 裁決結果の公表基準
(1)納税者の適正な申告及び納税のために有用であり、
   かつ、先例性があるもの
(2)適正な課税・徴収の実務に資するものであり、
   かつ、先例性があるもの
(3)その他、納税者の正当な権利利益の救済等の観点から
   国税不服審判所長が必要と認めたもの
(注)例えば、次に掲げるものは、上記の基準に該当する。
○法令又は通達の解釈が他の事案の処理上参考となるもの
○事実認定が他の事案の処理上参考となるもの
○類似の事案が多く、争点についての判断が
 他の事案の処理上参考となるもの
○取消事案等で納税者の主張が認められた事案で先例となるもの

さらに、内部通達では上記事務運営指針の解釈について
下記のように明示しています。

「裁決結果の公表基準の取扱いについて(指示)」
(平成23年3月4日 国税不服審判所長)
「(前略)取消事案については、「納税者が申告・納税や
不服申立てを行う上で有用であり、かつ、原処分庁を拘束するため、
これを広く周知することにより、その後の税務行政の適正な運営の
確保にも資するもの」と考えられることから、原則として、上記
「(3)その他、納税者の正当な権利利益の救済等の観点から
国税不服審判所長が必要と認めたもの」に
該当するものとして取り扱うこととする。」

引用が長くなったので、全体を整理するとこうなります。

裁決のうち不服審判所の基準で公開する裁決事例がある

これは「先例性」があることが基準
(法令解釈や事実認定などが以後の参考になる事例)

特に、取消(納税者が勝った)事案については公開されやすい
(以後の税務判断や税務調査で基準になるため)

昨今の重加算税事案においては、そのほとんどが
「その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした」
かどうかが賦課基準になっている(が、税務調査では
その判断基準が適用されずに賦課決定されている)

重加算税が論点になっている税務調査において、
調査官が用いる根拠、または仮装・隠ぺいの事実認定が
曖昧な場合、直近の公開裁決事例から
主張・反論するのは非常に有効な根拠になりますので、
ぜひ参考にしてください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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