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2019.10.18

最終報酬月額の増額と役員退職給与の関係

※2019年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「最終報酬月額の増額と役員退職給与の関係」ですが、

平成20年12月1日の大分地裁判決をご紹介します。

まず、この事例の前提条件を書きます。

〇問題になった事業年度は平成15年3月期

〇平成12年1月:肺がんが判明し、手術(1〜3月は入院)

〇平成14年3月頃:大腸がんが判明

〇平成14年5月下旬:いったん退院

〇平成14年6月上旬:再入院

〇平成14年8月16日:死亡

この流れの下、役員報酬の推移は下記となっていました。

〇平成13年3月まで:月額130万円

〇平成13年4月以降:月額150万円

〇平成14年4月以降:月額200万円

→平成14年8月16日:死亡

そして、法人は役員退職給与を

200万円×16年×3.5=1億1,200万円

として払い出した訳です。

しかし、国税はこの増額を問題視した訳です。

国税の主張は下記の金額です。

130万円×14年×3.5※=6,370万円

※平均功績倍率:3.387

そして、大分地裁は下記と判断したのです。

〇平成12年1月の入院以降の乙の職務内容は従前と比べて減少していたと

認められるから、その間業績が上昇する等の特段の事情がない限り、

入院以降に役員報酬額が上昇する合理的な根拠は認め難い。

〇平成12年3月期から平成13年3月期にかけての売上金額

及び売上総利益はいずれも微増したにすぎず、

平成13年3月期から平成15年3月期にかけては明らかな減少傾向

であったから、そこに役員報酬額が上昇する特段の事情は認められない。

〇平成12年3月期から平成15年3月期までの使用人に対する

給料の支給状況及び平成13年3月期から平成15年3月期までの

使用人最高給与額はいずれもほぼ横ばい。

〇入院以降の事業年度(平成13年3月期)の結果が反映する

平成13年4月以降に役員報酬額を上昇させる合理的な根拠はない。

〇類似法人の比準報酬月額は123万4885円ないし121万6108円

〇乙の適正役員報酬月額は平成13年3月時点の役員報酬月額130万円

結果として、過大役員報酬、過大役員退職給与とされた国税の処分は

適法とされた訳です。

なお、この事例は死亡退職の事例ですが、

生前退職であれ、役員報酬の増額と役員退職給与の関係は同じです。

いずれの場合であれ、下記のことが言える訳です。

〇役員退職給与の額を大きくしたいから増額することはリスキー

〇役員報酬の増額には下記を中心とした合理的理由が必要(法令70)

・役員の職務の内容

・法人の収益

・その使用人に対する給与の支給の状況

・その法人と同種の事業を営む法人で

その事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況

この10年は団塊の世代の方を中心に退職する事例が多くなりますので、

皆さんの事務所ではご注意頂ければと思います。

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