未支給年金の相続財産性
※2023年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のテーマは
「未支給年金の相続財産性」です。
未支給年金の支給に関しては、
国民年金法第19条第1項により
以下のように規定されています。
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(未支給年金)
第十九条 年金給付の受給権者が死亡した場合において、
その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に
支給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、
子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の
三親等内の親族であつて、その者の死亡の当時その者と
生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の
年金の支給を請求することができる。
2 前項の場合において、死亡した者が遺族基礎年金の
受給権者であつたときは、その者の死亡の当時当該遺族基礎年金の
支給の要件となり、又はその額の加算の対象となつていた
被保険者又は被保険者であつた者の子は、同項に規定する子とみなす。
3 第一項の場合において、死亡した受給権者が死亡前に
その年金を請求していなかつたときは、同項に規定する者は、
自己の名で、その年金を請求することができる。
4 未支給の年金を受けるべき者の順位は、政令で定める。
5 未支給の年金を受けるべき同順位者が二人以上あるときは、
その一人のした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、
その一人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす。
—
老齢基礎年金の受給権者の相続開始時に
当該死亡した受給権者に係る未支給年金
がある場合、当該死亡した受給権者に
係る当該未支給年金を配偶者等が請求
することができる権利(以下「未支給年金
請求権」といいます。)が相続税の課税
対象となるか否か。
結論としては・・・
未支給年金請求権については、
当該死亡した受給権者に係る遺族が、
当該未支給の年金を自己の固有の
権利として請求するものであり、
死亡した受給権者に係る相続税の
課税対象にはなりません。
理由としては、2つあります。
1.国民年金法に基づく未支給年金
請求権の相続性については、
最高裁判決(平成7年11月7日)
において、その相続性を否定しています。
2.未支給年金請求権は、みなし
相続財産にも該当しません。
なぜならば、未支給年金請求権は、
国民年金法の規定に基づき一方的に
付与されるものであることから
契約に基づかない権利(請求権)で
ありますが、相続税法第3条第1項
第6号に規定する「これに係る一時金」
には、継続受取人が受給を受けるべき
「定期金が特別に又は選択的に
一時金とされる場合の一時金のみ
が含まれる」こととされている
趣旨からすると、
未支給年金については、定期金では
なく最初から一時金のみを支給
するものであるためです。
ただし、遺族が支給を受けた
未支給年金は、所得税基本通達
34-2により、当該遺族の
一時所得に該当しますので、
注意が必要です。
—
(遺族が受ける給与等、公的年金等及び退職手当等)
34-2 死亡した者に係る給与等、公的年金等及び退職手当等で、
その死亡後に支給期の到来するもののうち9-17により課税
しないものとされるもの以外のものに係る所得は、その支払を
受ける遺族の一時所得に該当するものとする。
(昭63直所3-3、直法6-2、直資3-2、平元直所3-14、直法6-9、直資3-8改正)
—
また、「未支給年金請求権」以外に
実務上留意すべき非課税財産としては、
「(国民健康保険法に基づく)葬祭料」
「(健康保険法に基づく)埋葬料」
がありますので、以下併せてご確認ください。
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・(国民健康保険法に基づく)葬祭料の扱い
健康保険法第58条第1項に葬祭料の規定がありますが、
第68条に非課税の規定があります。
(租税その他の公課の禁止)
第六十八条 租税その他の公課は、保険給付として
支給を受けた金品を標準として、課することができない。
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・(健康保険法に基づく)埋葬料の扱い
健康保険法第100条、第113条、第136条に埋葬料の規定がありますが、
第62条に非課税の規定があります。
(租税その他の公課の禁止)
第六十二条 租税その他の公課は、保険給付として支給を
受けた金品を標準として、課することができない。
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国税庁ホームページ
/質疑応答事例/未支給の国民年金に係る相続税の課税関係
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