机上調査は税務調査なのか?
※2015年4月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。
以前のブログ「この時期だからこそ注意!」において、
税務署からの電話連絡であっても、税務調査と判断
されれば、加算税が課されるという注意点を書きました。
この点、セミナー懇親会で、
複数人の税理士から「知らなかった」と言われるのと同時に、
「違和感がある」「納得しがたい」との意見も出ました。
重ねて強調しておくと、電話・郵送物・対面等、
【税務署からの接触行為の形態を問わず】、
結果として修正申告となった場合、
「行政指導」であれば、加算税は課されない
「税務調査」であれば、加算税は課される
となり、一概にどちらとも断定することはできません。
(事案ごとの経緯等で判断するということです)
多くの税理士の理解は、「事前通知があれば税務調査。
それ以外は調査ではない(行政指導)。」
となっているようで、この理解が誤っているからこそ、
修正申告提出後の加算税に関してモメることになります。
実際の事案として、最近の公開裁決があります。
「原処分庁が、請求人自身の面接を経ずに無申告加算税の
賦課決定処分をした事案について、国税通則法第66条第5項
の「調査」は、机上調査も含む広い概念であることを
明らかにした事例」(平成26年7月28日裁決)
http://www.kfs.go.jp/service/JP/96/01/index.html
この裁決の前提は下記です。
○贈与税が無申告だった
○税務署が持分変更登記から贈与の事実を把握
○税務署は納税者に来署依頼の書面を送付
○納税者は税法の不知から税理士に依頼
(税務代理権限証書を提出しないまま
税務署のやり取りを開始しています)
○税理士が税務署に行ってやり取りをし、
納税者は税務署職員と一度も対面していない
○期限後申告書を提出
○無申告加算税15%が賦課され不服申立て
納税者側の主張としては、「調査ではないのだから
加算税15%はおかしい」とするものでした。
その主張根拠は、
○税務署が行った資料収集等の手続は
事前の検討にすぎず、調査に該当しない
○お尋ね文書の送付をもって外部から認識できる
調査が行われたとは認められない
○納税者本人は一度も税務署職員と
対面していないことから、調査とはいえない
でしたが、不服審判所は「調査」と判断し、
納税者が負ける結果となりました。
この裁決文の中で重要な論点は、
「調査」とは、課税庁が行う課税標準等又は税額等を
認定するに至る一連の判断過程の一切を意味し、
課税庁の証拠書類の収集、証拠の評価あるいは
経験則を通じての課税要件事実の認定、租税法
その他の法令の解釈適用を経て決定に至るまでの思考、
判断を含む包括的な概念であり、税務調査全般を
指すものと解され、納税者本人に対する臨場調査、
呼出調査だけでなく、いわゆる机上調査や
準備調査等のような税務官庁内部における調査も
「調査」に含まれるものと解される。
と結論付けていることです。
対面しなければ調査ではない、ということではなく、
調査とは広い概念であることがわかります。
裏を返せば、税務署から電話・郵送で連絡があっても、
税理士も含めた納税者側が自ら判断し、
修正申告・期限後申告をしていれば
自主的な提出して加算税を課されなかった
(かもしれない)ということです。
行政指導と調査の明確な切り分けは難しい以上、
税務署から連絡があった際は、「行政指導である」
旨を事前確認するとともに、税務署とのやり取りを
避けて、自ら申告することをすることで
余計な加算税を課されないことができるのです。
このあたりが税理士の腕の見せ所でしょう。
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