機械装置の原状回復費用は修繕費か?
※2016年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「機械装置の原状回復費用は修繕費か?」ですが、
TKC税務Q&Aなどを取り上げます。
私が節税セミナーを開催した際の質疑応答で、製造業の方などから、
下記のような質問が出たことが複数回あります。
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機械は定期的に色々な部分を交換しなければなりませんが、
交換すれば、その後、継続的に使えます。
ただし、性能等がアップした訳ではなく、原状回復です。
これを修繕費に計上してもOKでしょうか?
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確かに、法人税基本通達7−8−2(修繕費に含まれる費用)を見ると、
「き損した固定資産につきその原状を回復するために要したと認められる
部分の金額が修繕費となる」とあります。
しかし、同様のことを定めた所得税基本通達37−11(修繕費に
含まれる費用)を見ると、「災害等によりき損した固定資産につき
その原状を回復するために要したと認められる部分の金額〜が修繕費となる」
とあります。
「災害等によりき損した」という文言の有無が違います。
たしかに、法人税基本通達だけを読んでいると、原状回復費用であれば、
修繕費になるとも考えられます。
しかし、そうではなく、法人税も所得税も「災害等によりき損」
ということが前提になっているのです。
実際、「逐条解説 法人税関係通達総覧」(第一法規)には下記とあります。
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なお、本通達の本文において修繕費の意義として示している「き損した
固定資産につきその原状を回復するために支出する金額」については、
平成7年改正前は「災害等によりき損した・・・・・・」という表現になって
いたが、同年の改正により災害があった場合の資本的支出と修繕費の区分に
ついては基本通達7−8−6に定めるところによることとなったことに伴い、
本通達における「災害等により」の文言は削除されている。
もっとも、「災害等により」の文言が削除されたからといって、
通常の使用により固定資産が減耗し、き損した場合にもその原状回復費が
無条件で修繕費として認められるというものではないから、ここでいう
「き損した」というのは、あくまでも通常の使用以外の原因により
固定資産がき損した場合のことを指していると解すべきであろう。
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だから、「通常使用で固定資産が減耗し、き損した場合の原状回復費」は
その内容により、修繕費か?資本的支出か?を判断すべきなのです。
たとえば、TKC税務Q&Aに下記解説があります。
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【件名】機械装置のモーターの取替えと減価償却等
【質問】金属プレス加工設備のモーターを次のように取り替えた場合、
その取替費は修繕費となるのか、それとも資本的支出となるのか。
また、取替え後の減価償却費の計算はどのように行うのか。
金属プレス加工設備の取得価額 300万円
旧モーターの取得価額 30万円
同取得時期 昭55.5.10
新モーターの取得価額 50万円
同耐用年数 12年
取替時期 昭63.5.7
償却方法 定額法
【回答】
1、モーター取替費用50万円は、金属プレス加工設備の使用可能期間を
延長させる効果があるので、明らかに資本的支出として減価償却の対象
となる。(以下、略)
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この点は多くの税理士が誤解している側面もありますので、
ご注意頂ければと思います。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。