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2019.08.02

歌唱活動は事業所得か?雑所得か?

※2018年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「歌唱活動は事業所得か?雑所得か?」ですが、

平成29年10月6日の裁決(TAINS未登載)をご紹介します。

給与所得者が会社の活動とは別に収入を得る活動をしており、

これが赤字であることがあります。

当然、これが事業所得か雑所得かにより、損益通算の可否が変わってきます。

これが争われたのが、本事例です。

具体的には、歌唱活動で得た収入が何所得かで争われたのです。

概要をまとめると、下記の状況です。

〇請求人は平成24~26年にかけ、A社の代表取締役、常勤監査役だった

〇請求人は平成24~26年にかけて行なったライブ活動の回数

・平成24年:18回程度

・平成25年:43回程度

・平成26年:43回程度

〇平成25、26年はCDも販売

この状況で審判所は「雑所得」と認定したのですが、

その理由は下記です。

〇請求人が各年において、音楽関係者との交流、新たなCDの製作、

 スポンサー探しという活動を行なわなかった

〇歌唱活動も関係者からの依頼に応じたもののみだった

〇スケジュール管理を1人で行なっており、

 各年において、スケジュールを記載したブログを更新しなかった。

このとおり、事業所得か雑所得かの判定については、

〇営利性・有償性の有無

〇継続性・反復性の有無

〇自己の危険と計算における事業遂行性の有無

〇取引に費やした精神的・肉体的労力の程度

〇人的・物的設備の有無

〇取引の目的

〇事業を営む者の職歴・社会的地位・生活状況

などの諸点を総合して、社会通念上事業といい得るか否かによって

判断するものとされています(平成19年12月4日ほか)。

なお、本事例は「税のしるべ」(3327号)を参考にしましたが、

国税不服審判所のデータベースには非公開裁決として、

下記が掲載されています(一部改定)。

———————————————————————
請求人は、

(1)平成24年分ないし平成26年分(本件各年中)において

ライブハウスなどでの歌唱及び請求人の歌唱を収録したCDの販売

(本件行為)に係る収入を超える給与収入を得たのは請求人の意思ではなく、

請求人は本件行為に専念したいと考えていたこと

(2)請求人が歌手であると考える者が少なくないこと

(3)本件行為によって安定した収益を得ることができる状況でないことは

事実であるが、一般論として、個人事業者が安定した収益を得ることは

難しいこと

などからすれば、本件行為から生ずる所得は、事業所得に該当する旨

主張する。

しかしながら、事業所得に該当するか否かは、主観的な要素又は、

一般論をもって判断するのではなく、本件行為は、営利性及び有償性

並びに反復継続性をいずれも有しているものの、他方で、

〇本件行為から相当程度の期間継続して安定した収入を得られる可能性は

 低かったこと

〇本件行為には自己の危険と計算においてする企画遂行性を

 有していたとはいえないこと

〇本件行為に費やした精神的及び肉体的労力の程度は限定的であったこと

〇本件行為のための人的設備を有していなかったこと

〇本件各年中において、請求人は、株式会社A(本件会社)の

役員の地位にあり、本件会社などからの給与収入及び

本件会社からの配当収入を得て、生活の資とするとともに

本件行為のための資金としており、歌手としての社会的地位が

確立されていたとはいい難いこと

などの事情を総合的に考慮し、社会通念により判断すると、

本件行為から生ずる所得は事業所得に該当せず、雑所得に該当する。
———————————————————————

確定申告の状況は知りませんが、

私の知人でも同様の状況にある方がいますし、

同じような状況は歌唱活動ではなくても、あり得るでしょう。

ただし、このような場合において、

趣味の延長線上にあるようなレベルでは雑所得になるのです。

もっとも、趣味の延長戦上といっても、本事例では

・平成24年:18回程度

・平成25年:43回程度

・平成26年:43回程度

という回数のライブをやっている訳ですから、相当の回数ではありますが。

もし、みなさんのお客様から同様の相談があった場合、

「これだけの回数やっているならば、事業所得でいいだろう」

という安易な判断をしないようになさってください。

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一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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