死亡保険金に関する課税関係と特別受益該当性
※2022年3月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のメルマガは・・・
前回と同様、生命保険をテーマに
「死亡保険金に関する課税関係と特別受益該当性」
をお届けします。
■事例
契約者:父(=保険料負担者)
被保険者:父
保険金受取人:長男(5,000万円)
家族構成:父、母、長男、長女、次男
相続財産:上記保険金除き1.2億円(金融資産のみ)
税理士であれば
相続税総額は1,330万円というのは容易に計算できます。
この場合、死亡保険金の取扱いは
(1)相続税法上「みなし相続財産」に該当するため5,000万円
(2)非課税財産は、500万円×4人で2,000万円
結果として
3,000万円を計算要素に組み込んでいるかと思います。
まずは、上記(1)を検証します。
そもそも・・・
死亡保険金はなぜ「みなし相続財産」なのでしょうか。
理由:「受取人固有の財産」のため
根拠:最高裁第3小法廷昭和40年2月2日判決
「受取人固有の財産」≠被相続人の財産
つまり・・・本来財産ではないため
遺産分割協議の対象ともなりません。
そのため、実務上は
遺産分割協議書に記載することはないかと思います。
また、保険金受取人(長男)が相続放棄(民法938)をしても
受取人固有の財産であるため保険金を受け取ることは可能です。
ただし、経済的実質としては
被相続人(父)が負担した保険料に基づいて
相続人(長男)は負担なしに保険金を取得しているため
相続税の対象と考えることになります。
そこで、民法上は被相続人の本来財産ではないため
そのままでは課税財産とできないところ、
相続税法上、「みなし相続財産」と規定し
課税財産としています(相法3(1)一)。
ちなみに、相法3(1)一では、
「被相続人の死亡により相続人その他の者が・・・」
となっており、「その他の者」が入っています。
つまり・・・
相続人でない「孫」が死亡保険金を受け取った場合でも、
当然に相続税の課税対象としています。
仮に・・・
条文で「その他の者」が入っていない場合
「孫」が受け取った死亡保険金に
相続税が課税できなくなりますが
条文では当然に担保されています。
ここまでが上記(1)の検証となります。
次に、上記(2)の検証となります。
非課税財産:500万円×法定相続人の数
根拠:相法12(1)五
こちらのポイントは、条文の出だしにあります。
「相続人の取得した第三条第一項第一号に掲げる保険金・・・」
第三条第一項第一号に掲げる保険金となっているため
先ほど検証した「みなし相続財産」の規定となります。
ポイントは、「相続人の取得した」という枕詞です。
つまり・・・
相続人ではない「孫」の取得した死亡保険金は
「みなし相続財産」として相続税は課税されるものの
「非課税財産」にはそもそも該当しないことになります。
ただし・・・
相続人である「孫」が取得した死亡保険金は
「非課税財産」の対象となりますので、
養子となった孫は原則として該当することになります。
孫養子のカウント制限(相法15(2))は
こちらの非課税財産にも影響しますので、
実子がいれば養子1人が取得した死亡保険金だけが
こちらの非課税財産の対象となります(相法12(1)五イ)。
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