毎回の調査で期ズレが続いていれば重加算税になるのか?
※2021年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
前回から引続き、調査官が重加算税と
指摘しがちな【誤った論理】に関して解説します。
先週の本メルマガでは、前回の調査で指摘されたことが
是正されていなかった場合に重加算税になるのか、
について解説しましたが、今回はそれに似た内容です。
まず、先日結了したばかりの調査事案から紹介します。
【実例】
・売上数億円の建築業
・5年ごとに税務調査が入っている
(現顧問税理士は2年前から関与)
・前回/前々回の調査において期ズレで修正申告
(期末の売上を繰延べ・期初の外注費を前倒し)
・今回の調査でも全く同じ期ズレがあり、
調査官は重加算税と指摘している
・前回/前々回は重加算税ではない
調査官は重加算税と指摘する理由を
「毎期期ズレが発生している」
「意図的な処理としか思えない」
としたうえで、質問応答記録書への署名押印を
求めてきている状況でした。
この法人の処理は、毎期期ズレをしていることから、
期間を全体としてみれば同じ結果になる
(売上を繰り延べる意味はない)のですが、
粉飾と同じでいったん期ズレを当たり前にしてしまうと
戻すタイミングがないのでしょう。業績が
右肩上がりになっている場合は特に・・・
さて、ここで面白い?のは、調査官に対して
事務運営指針で重加算税を反論したところ、
論理的な回答・反論がなかったことです。
(帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない場合)
3 次に掲げる場合で、当該行為が相手方との通謀又は
証ひょう書類等の破棄、隠匿若しくは改ざんによるもの等
でないときは、帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない。
(1)売上げ等の収入の計上を繰り延べている場合において、
その売上げ等の収入が翌事業年度の収益に計上されている
ことが確認されたとき。
(2)経費(原価に算入される費用を含む。)の繰上計上を
している場合において、その経費がその翌事業年度に
支出されたことが確認されたとき。
この規定は一言でいうと「期ズレは重加算税にならない」
なのですが、論理的に解釈すると下記になります。
取引先との通謀や書類の破棄・隠匿・改ざんがない
場合の期ズレは重加算税にはならない
=
期ズレでも通謀や破棄・隠匿・改ざんがあれば重加算税
上記の調査事案では、期末月の売上・売掛金を
翌期初月に繰延べる、また翌期初月の外注費を
前期末月に前倒し計上しているという、ある意味
バレバレの方法をとっており、発注元や外注先と
何か通謀や書類の改ざんを行っていませんでした
(調査官は反面調査に行く意向だったようですが、
実施しても通謀などの事実はないが明確になるだけ)。
また、提示・提出を要請された資料等について、
何かを隠していたなどの隠匿行為もありません。
つまり、仮装隠ぺい行為が存在しないのです。
ですから、事務運営指針の規定からどう考えても
重加算税ではないことが明白なのです。
この事案における調査官の言い分を簡素化すれば
「2回目までは仕方ない(かもしれない)けど、
3回目はダメ(重加算税)」となりますが、
3回目だから重加算税になる根拠は当然ありません。
こういう主張をされると、むしろ
「では前回(2回目)はなぜ重加算税ではなかったのか」
と言いたくなりますね(しないですが)。
このように、調査官の中には毎回の調査で同じ
指摘を受けること自体が「意図的=重加算税」と
主張してくることが多いわけですが、
事務運営指針を見てもそのような規定はありません。
根拠をもって反論することが大事です。
来週の本メルマガでは、法人課税の調査官がよく言う
「売上計上漏れ=重加算税」という間違った
論理に関して解説します。
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