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2022.07.01

毎回の調査で期ズレが続いていれば重加算税になるのか?

※2021年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

前回から引続き、調査官が重加算税と
指摘しがちな【誤った論理】に関して解説します。

先週の本メルマガでは、前回の調査で指摘されたことが
是正されていなかった場合に重加算税になるのか、
について解説しましたが、今回はそれに似た内容です。

まず、先日結了したばかりの調査事案から紹介します。

【実例】

・売上数億円の建築業

・5年ごとに税務調査が入っている
(現顧問税理士は2年前から関与)

・前回/前々回の調査において期ズレで修正申告
(期末の売上を繰延べ・期初の外注費を前倒し)

・今回の調査でも全く同じ期ズレがあり、
調査官は重加算税と指摘している

・前回/前々回は重加算税ではない

調査官は重加算税と指摘する理由を
「毎期期ズレが発生している」
「意図的な処理としか思えない」
としたうえで、質問応答記録書への署名押印を
求めてきている状況でした。

この法人の処理は、毎期期ズレをしていることから、
期間を全体としてみれば同じ結果になる
(売上を繰り延べる意味はない)のですが、
粉飾と同じでいったん期ズレを当たり前にしてしまうと
戻すタイミングがないのでしょう。業績が
右肩上がりになっている場合は特に・・・

さて、ここで面白い?のは、調査官に対して
事務運営指針で重加算税を反論したところ、
論理的な回答・反論がなかったことです。

「法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」

(帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない場合)
3 次に掲げる場合で、当該行為が相手方との通謀又は
証ひょう書類等の破棄、隠匿若しくは改ざんによるもの等
でないときは、帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない。
(1)売上げ等の収入の計上を繰り延べている場合において、
その売上げ等の収入が翌事業年度の収益に計上されている
ことが確認されたとき。
(2)経費(原価に算入される費用を含む。)の繰上計上を
している場合において、その経費がその翌事業年度に
支出されたことが確認されたとき。

この規定は一言でいうと「期ズレは重加算税にならない」
なのですが、論理的に解釈すると下記になります。

取引先との通謀や書類の破棄・隠匿・改ざんがない
場合の期ズレは重加算税にはならない

期ズレでも通謀や破棄・隠匿・改ざんがあれば重加算税

上記の調査事案では、期末月の売上・売掛金を
翌期初月に繰延べる、また翌期初月の外注費を
前期末月に前倒し計上しているという、ある意味
バレバレの方法をとっており、発注元や外注先と
何か通謀や書類の改ざんを行っていませんでした
(調査官は反面調査に行く意向だったようですが、
実施しても通謀などの事実はないが明確になるだけ)。

また、提示・提出を要請された資料等について、
何かを隠していたなどの隠匿行為もありません。
つまり、仮装隠ぺい行為が存在しないのです。

ですから、事務運営指針の規定からどう考えても
重加算税ではないことが明白なのです。

この事案における調査官の言い分を簡素化すれば
「2回目までは仕方ない(かもしれない)けど、
3回目はダメ(重加算税)」となりますが、
3回目だから重加算税になる根拠は当然ありません。

こういう主張をされると、むしろ
「では前回(2回目)はなぜ重加算税ではなかったのか」
と言いたくなりますね(しないですが)。

このように、調査官の中には毎回の調査で同じ
指摘を受けること自体が「意図的=重加算税」と
主張してくることが多いわけですが、
事務運営指針を見てもそのような規定はありません。
根拠をもって反論することが大事です。

来週の本メルマガでは、法人課税の調査官がよく言う
「売上計上漏れ=重加算税」という間違った
論理に関して解説します。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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