法人から個人への生命保険契約の変更に関する留意点
※2022年4月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のテーマは・・・
法人から個人への生命保険契約の名義変更に関する留意点
になります。
今回と次回の2回に分けてご説明させていただきます。
いわゆる「名義変更プラン」の実行可能性を実質的に無くす
改正通達が令和3年6月25日に発遣されました。
今回は、以下の内容をお届けします。
1.通達改正の経緯
2.通達改正の内容
1.通達改正の経緯
(1)改正前通達の概要
法人から個人へ名義変更を行う際、
生命保険契約に関する権利評価額は
原解約返戻金相当額*とされていました(所基通36-37)。
*補足
解約返戻金のほかに支払われることとなる前納保険料の金額、
剰余金の分配額等がある場合には、これらの金額との合計額
そのため、名義変更する直前で
解約返戻金相当額が支払保険料よりも
圧縮できているタイプの保険(低解約型の逓増定期保険)
を使い保険提案がなされていました。
この提案のメリットとしては
・法人から個人への効率的な資金還流
・法人における多額の損金算入
があり、保険募集人には非常に
提案しやすいメリットとなっていました。
令和元年の法人保険の課税処理に関する
抜本改正となったバレンタインショック
の影響により法人保険の販売が苦しくなった保険募集人が
こぞって「名義変更プラン」を提案したという背景があります。
(2)改正後通達の内容
上記のように行き過ぎた保険提案に歯止めをかける形で
国税庁が通達を改正しました。
バレンタインショック時の国税庁コメントに
名義変更プランに対する質問回答があり
早いタイミングで改正されるニュアンスはありましたが
想像以上に早かった印象があります。
原則的取扱いは変わらないものの
ただし書きで例外処理が2つ設けられました。
その中でも最初の例外規定に注意が必要です。
通達内容は以下のとおりです。
(1) 支給時解約返戻金の額が支給時資産計上額の70%に
相当する金額未満である保険契約等に関する権利
(法人税基本通達9-3-5の2の取扱いの適用を受けるものに限る。)
を支給した場合には、当該支給時資産計上額により評価する。
ポイント[1]
支給時解約返戻金の額<支給時資産計上額×70%
この場合は、解約返戻金で評価するのではなく
名義変更時の資産計上額で評価されることになります。
提案される多くの保険商品が低解約型の定期保険であるため、
ほとんどの場合には、この規定に該当することになります。
そのため、名義変更プランのメリットは
全く享受できない結果となりますので、
実質的には名義変更プランを塞いだことになります。
ポイント[2]
適用となる保険契約は法人税基本通達9-3-5の2*
の取扱いを受けるものに限られています。
*定期保険等の保険料に相当多額の前払部分の
保険料が含まれる場合の取扱い
つまり、最高解約返戻率が
50%を超えるものが対象となります。
上記以外の留意点については次号で紹介させていただきます。
令和3年6月25日
「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。
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