法人税法の寄付金を理解する(総論)
※2022年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
法人に対する税務調査において、調査官から広い
解釈をされ「寄付金」と指摘されるケースがあります。
このような場合、調査官が指摘する寄付金の論拠は
「対価性がない」「反対給付が足りない」(損をしている)
という漠然とした言葉であることが多いわけです。
確かに、法人税法における寄付金について
総じた解釈をすれば「対価性がないから寄付金」は
間違ってはいないでしょう。
一方で、1つ1つの取引を検証した場合に、
・贈答などの交際費には対価性があるのか
=売上がない見込客への贈答は寄付金になるのか?
・子会社の債権放棄はどのような場合でも寄付金か?
=債権放棄という行為自体に対価性はない
など「対価性がない」という論拠だけでは
寄付金にならないケースも当然に存在するわけです。
個別論点に関しては来週以降の本メルマガで
取り上げますが、今回は総論として「寄付金」の
法律規定からの正しい理解を解説します。
まず、法人税法における寄付金の定義から。
法人税法第37条第7項
前各項に規定する寄附金の額は、寄附金、拠出金、
見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず、
内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与
又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他
これらに類する費用並びに交際費、接待費及び
福利厚生費とされるべきものを除く。次項において同じ。)
をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産の
その贈与の時における価額又は当該経済的な利益の
その供与の時における価額によるものとする。
同条第8項
内国法人が資産の譲渡又は経済的な利益の供与をした
場合において、その譲渡又は供与の対価の額が当該資産の
その譲渡の時における価額又は当該経済的な利益の
その供与の時における価額に比して低いときは、
当該対価の額と当該価額との差額のうち実質的に贈与
又は無償の供与をしたと認められる金額は、
前項の寄附金の額に含まれるものとする。
このように、寄附金には無償行為による支出以外に、
対価の不均衡(低廉取引)によってなされる
経済的利益の移転も含まれることになります。
ただし、法人による無償の供与や、金銭その他の
資産・経済的な利益の贈与であっても、
●法人の事業遂行と直接関係があると認められる
広告宣伝費・交際費・福利厚生費等に該当するものは、
寄附金から除かれます(法37条第7項カッコ書き)
●法人が寄附金として支出したものであっても、
法人の役員等が個人として負担すべき性格を持つ
支出は、その者に対する給与となります
(法人税基本通達9-4-2の2)。
また、寄付金とされる額の算定は、
●贈与又は無償の供与:金銭の額又は
贈与若しくは供与のときの【時価】で評価した額
●低廉譲渡:譲渡時の【時価】と譲渡価額との差額
となることから、税務調査で寄付金と指摘された場合、
「時価とはいくらか?」を意識する必要があります。
例えば、子会社への業務委託費、もしくは
関連会社と商品の売買があるようなケースでは、
時価=価格設定の合理性・適正性が問題になります。
価格設定の合理性における詳細ついては、
来週の本メルマガに譲りますが・・・
今回のメルマガではあくまでも、単純に
「対価性がない」という要件だけで寄付金になる
わけではなく、贈与又は無償の供与、および
低廉譲渡があった際に、時価との乖離額があれば
寄付金となることを理解してください。
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