法人税法の寄附金を理解する(価格設定の合理性)
※2022年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先週水曜の本メルマガから引続き、法人税法における
「寄附金」を取り上げますが、今回は特に、
関係会社などに対する売買単価・委託費など、
価格設定の合理性について解説します。
税務調査において寄附金の否認指摘を受けるケースで
最も多いのは関係会社間の取引であり、かつ
受発注の価格設定に合理性がない場合でしょう。
もっといえば、調査官が寄附金を注視するのは、
赤字法人に利益(所得)を寄せて、黒字法人の利益を
減らすような全体構造になっているケースです。
受発注を行っている関係会社の両方が
有所得(黒字)である場合、どちらに利益を寄せても
全体としての所得・税額はほぼ変わらないからです。
ですから、顧問先の中で関係会社間取引が存在し、
かつ片方が赤字(欠損金がある等)の場合は、
寄附金の否認(指摘)リスクが高いものと、
事前に想定しておくべきです(価格設定の合理性を
説明できる準備をしておくべきです)。
関係会社間の価格設定については、一言でいえば
「経済合理性がある」ことが論点です。
もっとも反論が容易なのは、第三者との取引価格
=時価(に近い)ことでしょう。一方で、
時価(第三者との取引価格)から乖離していれば
合理性がないとして否認指摘の対象となりがちですが、
時価から乖離していたとしても、その価格設定に
合理的な理由がある=実質的な贈与とはみられない場合、
寄附金には該当しないことになります。
関係会社間の取引とは論点が離れますが・・・
一般的に「フリーレント」の設定に関しては、
表面的には(一定期間の)賃料の免除にもかかわらず、
寄附金の対象にならないとされています。
これは、フリーレントを設定する代わりに、
途中解約ができないなどの制限をかける
(途中解約した場合は違約金が発生する)ことで、
賃貸借期間の総賃料について合理性があるからです
(賃借側における移転時の重複家賃を回避して、
入居・賃借を促進する効果がある)。
このように、取引に関して「制限」や「条件」等が
ある場合、取引価格と時価に乖離があったとしても
経済合理性がある、と判断されることになります。
関係会社間の受発注の場合、例えば
・材料を安く供給する代わりに製品を安く販売する
(全体としての経済合理性がある)
・在庫を抱えており納品が早い
(受注側がリスクを負担している)
・発注/納品のロット数が多いため他社で対応不可
(付加価値がある・高い)
などが説明できれば、寄附金の否認リスクは
かなり下がるといえるでしょう。
このように、各個別の取引とその価格設定をみれば
合理性がないような場合であっても、
●全体としては経済合理性がある
●関係会社でなければ対応できない
(リスク負担もしくは付加価値がある)
のどちらかを説明する・できることが重要になります。
来週水曜の本メルマガでは、寄附金と
隣接する他科目との関連・区分について解説します。
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