法人税法の寄附金を理解する(経済合理性がある場合)
※2022年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先週水曜の本メルマガから引続き、法人税法における
寄附金と貸倒損失の区分を取り上げます。なお、
今回が寄附金を取り上げる連載の最終回となります。
先週水曜の本メルマガでは、貸倒損失が認められない
=寄附金となり得る要件を取り上げましたが、
総じていうと貸倒損失が認められる前提となる考え方は
「金銭債権が社会通念上回収が不可能と評価できる
事実が必要(課税要件)」と言えます。
この考え方はそもそも、営利目的である法人が、
他社(他者)に経済的利益の移転をすることを
税法上は認めないことからきています。
貸倒損失を形式的・安易に認めることで、
経済的利益の移転を防止する目的があるわけです
(特に黒字法人から赤字法人への所得移転)。
第三者に対する貸倒損失が認められる要件については
下記国税庁の質疑応答事例もあります。
一方で、債務者である相手方が債務超過に陥れば
貸倒損失が(形式的に)認められるわけではないことは
先週も解説しましたが、さらに重要な論点として
債務超過ではなくとも貸倒損失が認められる要件として
国税庁の質疑応答事例に、下記があります。
債権者があえて債権放棄などをすることによって、
むしろ債権者が得をする(今後より大きな損失を
被ることを避けることができる場合も含む)のであれば
それは【経済合理性がある】行為として、
貸倒損失が認められる=寄附金にはならない
というケースもあるということです。
上記の質疑応答事例においては、
「営業を行うために必要な登録、認可、許可等の
条件として法令等において一定の財産的基礎を
満たすこととされている業種」が挙げられていますが、
よくあるケースは、入札業者の登録でしょう。
公共工事を請け負う土木・建築会社などは、
一般的に3期連続の赤字決算になると
県の指名入札業者の登録から外されてしまいます。
債務超過ではないが、このままでは赤字決算となる
子会社があり、親会社が債権放棄をすれば
当期の黒字が確保できるような場合、
●このままでは指名入札ができなくなる
●よって売上が半減して子会社が存続できない
●子会社が存続できなければ親会社が損失を被る
=債権放棄をした方が親会社にとって
経済合理性がある(と主張することができる)
場合、債務者である子会社が債務超過ではなくとも
貸倒損失が認められることになります。
なお、先週の本メルマガで最後に取り上げた
平成11年6月30日の公開裁決事例
も、子会社ではなく第三者(取引先・卸先)ですが、
債権放棄をした方が経済合理性があるとして
寄附金認定が取り消された事例となっています。
子会社であろうと第三者であろうと、
債権者側から債権放棄をすることについて
経済合理性があれば貸倒損失は認められる
=寄附金にはならないことになりますので、
税務調査ではエビデンスの準備・提示を含めて、
この主張論拠をとることが重要となります。
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