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2023.09.01

法人税法の寄附金を理解する(貸倒損失との関係)

※2022年9月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

先週水曜の本メルマガから引続き、法人税法における
「寄附金」を取り上げますが、今回は税務調査で
否認されると多額になってしまう「貸倒損失」と
寄附金との関係・区分についてです。

法人税法上の寄附金を読み解いていくと、
間違いなく「貸倒損失が認められない=寄附金」
という論点に行き当たります。

まず、貸倒損失と寄附金の区分は、
資本関係があるか無いかは関係ありません
(子会社だから認められない・第三者だから
認められるというものではありません)。

このように勘違いする理由として、寄附金の
法令解釈通達9-4-1もしくは9-4-2には
「子会社等を整理する場合の損失負担等」などの
タイトルがついているからですが、通達の注書き
には「子会社等には、当該法人と資本関係を
有する者のほか、取引関係、人的関係、資金関係等
において事業関連性を有する者が含まれる」
と明記されていることから、資本関係がなくても
同じ判断基準になります(貸倒損失を否認されると
寄附金になりますが、完全支配関係にある場合は
損金不算入になるなど取扱いに違いはあります)。

「法人税基本通達」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_04_01.htm

「完全支配関係にある内国法人間の支援損について」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/13/28.htm

全体の考え方を整理すると、

●債務免除・損失の肩代わり・再建支援負担など
をすれば原則として寄附金になる

●ただし、通達9-4-1もしくは9-4-2
の適用がある場合は損金算入することができる

ということになります。

通達9-4-1における「やむを得ずその損失
負担等をするに至った等そのことについて
相当な理由があると認められるとき」、もしくは
通達9-4-2における「合理的な再建計画に
基づくものである」などは、ほぼ事実認定や
個別評価によるものであって、定量的な基準は
示されていないわけですが、少なくとも
下記の国税庁質疑応答事例は参考にすべきです。

「損失負担(支援)額の合理性」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/13/07.htm

「合理的な整理計画又は再建計画とは」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/13/01.htm

一般論とはなりますが、再建支援の相手方が
債務超過に陥ったという事実だけでは認められず、

●債務超過が3期以上継続している

●欠損が2年以上継続し、かつ、当期末累積欠損金が
資本金等の2倍以上になっている場合

●当期の天災事故・経済の激変等不慮により
当期欠損金が資本金等の2倍以上となった場合

などの基準を載せている書籍もあります。

これらの基準がどこまで汎用性があるのかは
不明ですが、少なくとも寄附金ではないことを
税務調査において反論するためには、
子会社を含めた相手方の決算書等の情報を
明示できた方が反証力は高いでしょう。

ガソリン卸業社がガソリンスタンドに対して、
売掛金の減免だけではなく、廃業等に伴う
整理に必要な資金を支援したことが寄附金とされた
公開裁決事例において、納税者側は損金算入として
勝っている事案もありますので参考にしてください。

「不採算又は事業後継者難の特約店4社に対して、
請求人が行った売掛金の減額処理は、請求人の
経営遂行上真にやむを得ない費用であるから
寄付金課税の対象にはならないとされた事例」
(平成11年6月30日裁決)
https://www.kfs.go.jp/service/JP/57/24/index.html

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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