法人税法の寄附金を理解する(隣接科目との区分)
※2022年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先週水曜の本メルマガから引続き、法人税法における
「寄附金」を取り上げますが、今回は税務調査での
否認指摘において混同されやすい隣接科目・他科目
との関連・区分について解説します。
まず、もっとも寄附金と混同されやすい科目として
交際費が挙げられます。寄附金と交際費等との
区分について下記の通達があります。
措置法通達61の4(1)-2
事業に直接関係のない者に対して金銭、物品等の贈与を
した場合において、それが寄附金であるか交際費等で
あるかは個々の実態により判定すべきであるが、
金銭でした贈与は原則として寄附金とするものとし、
次のようなものは交際費等に含まれないものとする。
(1) 社会事業団体、政治団体に対する拠金
(2) 神社の祭礼等の寄贈金
寄附金と交際費は、対価性との関連が曖昧・乏しい
という点で共通していることから、その区分が
困難なケースが多いわけですが、交際費の要件は
・相手方が事業に関係のある者であり、
・親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図る
という目的での支出を指しています。したがって、
●事業に関係のない者に対する利益の供与
もしくは
●事業に関係のある者に対する利益の供与であっても
それが事業とは無関係の目的からなされたものである
ような場合は、交際費ではなく寄附金になり得ます。
この点に関しては「寄附金=贈与」「交際費=贈答」
という一般的な説明が有効なのですが、この論点の
詳細については、下記を参照してください。
税務調査において交際費を寄付金と指摘された場合、
「寄附金ではない」と主張するより、
「見返りを期待している支出なので交際費」
と主張した方が有効なケースが多いでしょう。
同じような論点として、寄附金と「諸会費」の
区分が挙げられます。税務上、損金となる
諸会費に関しては明確な定義がないものの、
法人の事業に関係する同業者団体、商工会議所、
法人会などの団体に支払った会費は、
諸会費として損金になると解されています。
一方で、上記通達にもあるとおり事業関連性のない
NPO・公益財団法人など、社会事業団体・政治団体
への会費は寄附金に区分されるでしょう。
なお、寄附金税制の特例として、一定の公的な
性格を有する団体に対する寄附金については、
全額の損金算入(国又は地方公共団体に対する寄附金、
指定寄付金)、あるいは特別の損金算入限度額
(特定公益増進法人又は認定NPO法人等に対する
寄附金)が認められる場合もあります。
また、法人から役員または従業員に対し、実質的に
利益供与がなされているようなケースについては、
法人税法の寄附金には該当せず、給与もしくは
賞与に該当することになりますし、個人が負担すべき
寄附金を法人が負担した場合も、役員等の給与として
課税されることは通達でも規定されています。
法人税基本通達9-4-2の2(個人の負担すべき寄附金)
法人が損金として支出した寄附金で、その法人の
役員等が個人として負担すべきものと認められる
ものは、その負担すべき者に対する給与とする。
来週水曜の本メルマガでは、寄附金と
貸倒損失の区分について解説します。
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