無申告の税務調査対応と仕入税額控除の否認
※2020年9月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先週水曜のメルマガから引続き、無申告事案に
対する税務調査対応について解説しますが、
今回は請求書・領収書の保存がないために
仕入税額控除を否認指摘されるケースです。
多くの無申告事案では、帳簿がないどころか、
資料を適切に保存していない、もしくは
普段から請求書の発行・領収書の受領などを
していない場合がほとんどです。
そのため、税務調査では外注費などに関して
「仕入税額控除を認めない」と
否認指摘されるケースが多いでしょう。
法人税・所得税はともかくとして、仕入税額控除を
認められない場合、消費税額が多額になることから
納税者が「払えない」となるわけです。
もちろん、税法の「建前」を押し通すと、
請求書・領収書等の保存がないどころか、
帳簿における摘要欄の記載がない場合でも
仕入税額控除が認めらないことになります。
一方で現実的には、摘要欄の記載どころか、
請求書等がなくても仕入税額控除が
認められた公開裁決事例があります。
この裁決では、型枠工事業が職人に支払った
外注費の仕入税額控除を否認されたわけですが、
現場や職人の管理をする「出面帳」によって
仕入税額控除が認められた事例になります。
本裁決(判断)の中で重要な部分は、
法定帳簿については、課税仕入れに係る
(1)相手方氏名等
(2)課税仕入れの年月日
(3)その役務等の内容
(4)支払対価の額の法定記載事項
の各記載が必要であり、これらの要件を欠く帳簿は
法定帳簿として認めることはできないものの、本件
出面帳の記載内容等を法定帳簿の保存を法が定めた
趣旨に照らせば、本件出面帳のうち、法定記載事項
のすべてを満たしていると認められる部分のみを
法定帳簿と認めることが法定帳簿の保存を定めた法の
趣旨に反するとはいえない、と判断していることです。
簡単に書けば【法定要件は満たしていなくても
原資帳票類などを見てわかるのであれば
仕入税額控除を認める】ということです。
無申告の調査事案のみならずですが、
請求書等の保存がないために仕入税額控除の
否認指摘を受ける場合がありますが、
上記の裁決事例を明示し、支払いの事実などが
わかる基礎資料を提示することができれば
仕入税額控除は認められるはずです。
この裁決事例は非常に重要ですので、
ぜひ参考にしてください。
来週の本メルマガでは、無申告の調査事案に
おける「推計」について解説します。
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